坂本雄三 教授|建築学科 学科データを見る

坂本教授のCHANGE THE WORLD|空気の流れで日本人の人生を変える!

Profile
建築学専攻 建築環境学講座 工学博士
東京大学工学系研究科建築学専攻建築環境学講座教授。北海道大学、東京大学大学院で学んだ後、(旧)建設省建築研究所に入所。その後、名古屋大学工学部建築学科助教授を経て、1994 年より東京大学へ。子どものころから理科が大好き。危ないとわかっていても好奇心が勝り、部屋で火事を起こしそうになったことも……。趣味は読書。歴史ものが好き。

日本人の人生を変えるまでの3STEP

  1. STEP1|内窓断熱が省エネ&冬の暖かさを実現!
  2. STEP2|内窓断熱や快適な空調環境が家庭に浸透!
  3. STEP3|年をとっても活動的に元気に過ごせる!

内窓で断熱、除湿で、もっと快適、省エネな住環境を!

TSCPで導入された新型熱電源。

工学・エンジニアリングの視点から、建築や住環境を考える環境工学。省エネを実現しながら、より快適な生活環境をつくるための研究や検証が行われている。その一つである、東京大学をエコキャンパスへ変貌させるビッグプロジェクトを進めているのが坂本雄三教授だ。

「住環境をつくる4大要素には、熱・光・空気・音があります。私はそのなかの熱≠ニ空気≠専門に扱っています。日本には四季があり、冷房や暖房が必要になりますが、どうしたらできるだけ電気を使わないで快適に過ごせるか、どんな空調設備が最適かを研究しています。そんな研究をしていながら、自分がいる場所の空調が悪くては恥ずかしいですよね。そのために2006年から、前東大総長の小宮山宏先生が提唱した、『東大サスティナブル・キャンパス・プロジェクト(TSCP)』に参加して、CO2排出量を2030年度までに50%削減することを目標に、窓の断熱改修や空調設備の省エネ化などの実践活動を進めています」

坂本教授の研究室の窓には、白い縁の内窓がついている。この断熱改修だけで、エネルギー消費量は大幅に変わる。
「この部屋も内窓をつけたことで、冬が非常に快適になりました。そして、暖房エネルギーは60〜70%も削減することができました。新築して、二重サッシを完備し、最新の空調システムを入れれば、エコキャンパスをつくることは簡単ですが、東大のように昭和初期に建てられた建物で省エネを目指すのはむずかしい。しかし、世のなかの建物は千差万別で、東大キャンパス以上にいろんな建物があります。たとえベストでなくとも、ベターな省エネの住環境をつくっていく必要があり、そのための一つが、内窓なのです」

内窓で快適な坂本研究室。

内窓の省エネ性を説き、経済も動かす!

注目したいのは、坂本教授が行った内窓による省エネ実験と検証は、経済をも動かしていることだ。
「内窓リフォームは住宅エコポイントの対象になっていませんでした。新築ではなく、リフォームがエコに貢献するということを、国土交通省や経済産業省などに納得してもらうために、さまざまな検証データをそろえなければいけませんでした。研究の甲斐あって、内窓の効果は認められ、エコポイントの対象になりました。現在、この制度は終わってしまいましたが、それまで1億円程度の規模だった内窓市場が数十億円に膨らんだんです。一つの研究・検証がこうして経済の動きをも変えていくというのは、とてもおもしろいです」

大学は、商品をつくって売るメーカーではない。大学に求められている重要な役割の一つが、実験、検証、評価、シミュレーションなのだという。
「私たちは建物の評価、いわば健康診断≠熏sっています。評価をしていくと、今までの空調設備がエネルギーもお金も使い過ぎていたことが明らかになり、こんなはずじゃなかった! なんとかしないとマズい! ということがわかります。この、問題が明らかになるということに非常に意味があります。そこから、ではどんな薬≠処方すべきか、手術≠ェ必要なのか、という話になります。今私の研究室では、健康診断もしながら、それに効く薬の研究(=内窓などの研究)も同時にしています」

デシカント空調≠ナ本当の除湿の快適さを!

「私の出身は北海道です。北海道の夏は涼しくて快適。それは気温が低いだけでなく湿度も低いからです。そこで、私が取り組んでいるのが除湿空調≠ナす。家庭用エアコンの除湿機能のほとんどが冷却除湿≠ナ、余計な冷却を伴いますので、本当の意味での除湿にはなっていません。寒くならずに快適に過ごせる、本当の除湿があるんです。それを可能にするのがデシカント空調≠ニいう空調システムで、今その実用化に向けて研究を進めています。温度を下げずに湿度だけを下げて、より快適に過ごそうというのは、当然の要求です。このよりよいものを求めていくという創造型の需要≠ェこれからの経済には必要です。これまでなかったものが登場して一気に普及する、高度経済成長期の車やテレビのような普及型の需要≠ヘ飽和しつつあり、これからは創造型の需要が必要になるでしょう。そのためにはデシカント空調も、売れるためのカタチ、価格を実現しなければいけません」

坂本教授はよく「人間が中心」という言葉を口にする。そんな教授が見据えているのは、これからの人間のこと。これからさらに増える高齢者のことだ。
「私も含めて、高齢者は増えていく一方で、必ず少子超高齢化社会がやってきます。そこに対策を打たなければいけません。大切なのは高齢者が活動的であること。そのために、いくつになってもみんなが社会のためにはたらける世のなかを築こうと、地域・企業・研究機関が一丸となって『プラチナ構想ネットワーク』というプロジェクトに取り組んでいます。これも先ほどの小宮山宏先生が実践されていることです。高齢者が活動的になれば経済はまわるし、医療費も抑えられます。内窓や空調管理によって省エネを実現しながら、冬でも暖かく快適な環境を保つと、血圧など健康面にどのような効果があり、どんな活動的な生活につながるか、今まさに検証が始まろうとしています。空調という分野から、日本が抱えている社会問題を考えると、人の生き方に辿り着きます。社会を変えるというよりは、人の人生を変えたい。それはやっぱり、建築は人間が中心だからですね」


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坂本教授の研究 Keyword 4|住環境はリフォームできる! 断熱と快適な空調環境を!

  1. Keyword 1|これが自慢の内窓!冬でも冷気を通さない
    2年前に設置したという教授の研究室の内窓。これが町の家電量販店で住宅エコポイントつきで買えるようになったのも、教授たちの努力の賜物。存在感はあるものの「白いサッシで部屋が明るくなる!」と女性陣からも好評だ。
  2. Keyword 2|これが次世代の空調“デシカント空調”!
    乾燥剤を使って空気の温度を下げずに湿気だけ除去する、デシカント空調。原理は簡単で、どのメーカーの研究者でもわかるはずだという。ただし、それを実用化するには、大きさ、価格など、まださまざまな問題があり、研究が進行中。
  3. Keyword 3|シミュレーションは大事な研究のひとつ
    坂本教授の専門の一つ、空調の気流シミュレーション。空調の研究を始めたころ、コンピュータ・シミュレーションが出始めた。これを取り入れた教授と意気投合し、研究に没頭。「波長の合う研究者と出会えることは幸せなこと」
  4. Keyword 4|気配を感じて空調制御。省エネ人感センサー
    2011年の春に教授の研究室に導入されたばかりの人感センサー。30分以上人の気配がないと、自動で空調が止まる。内窓などの省エネ対策と組み合わせることで、エアコン代を年間1万円程度に抑えられるという試算も。

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研究学生インタビュー

坂本研究室|矢島 和樹さん|東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 修士課程2年

研究の様子

教授室も工学部1号館も全部が研究現場です!

坂本教授いわく「うちの学生たちは草食系。でも頭はバツグンにいい。エンジニアだからそれでいい」。そんな言葉を横で苦笑いしながら聞いていた矢島和樹さん。現在、建築学専攻の修士課程2年目。東大キャンパスの密かな大改修、TSCPを実践するひとりだ。

具体的にはどんな研究をしているの?
内窓などのリフォームと同時に進めているのが、大きな空調設備、いわゆるエアコンの入れ替えです。建築物に設置する大型設備は15〜20年くらいで寿命が来て、付け替える必要があります。運よく、僕たちがいる本郷キャンパス工学部1号館が2011年、付け替え時期を迎えました。1年かけてシミュレーションをして、’11年の7月に運用がスタート。いざデータを取り始めたらシミュレーション通り!
建築学を専攻した理由は?
もともと古い建物が好きで、建築っておもしろそうと思ったのがきっかけです。そういう意味では、古い建物を残しながら省エネを実現できる空調改修の研究に携われて、うれしいですね。
ところで、建築学科は入る前に想像していた通りだった?
建築=デザインだと思っている人が多いと思いますが、ここはデザインだけではありません。それは認識しておいたほうがいいと思います。ただ、建築学科に入ってからも意匠、環境などいろんな分野があるので楽しいですよ。
すでに大手メーカーへの就職が決まっているそうですね。日本のこれからの空調、どう変えたい?
日本は土地が少ないので新しい建物はあまり建たなくなっています。そのなかで建物の改修をしながら空調を快適にしていくことは重要です。今の建物は全般的に空調が効き過ぎているので、もっと本来あるべき空調に整えていければいいなと思います。そのためには建物の健康診断≠ネども、もっと広めていきたいですね。修了後は施工業者側として、現場でいろいろ考えていきたいと思っています!

建築学科|住まいから都市までを築く創造力を養い、建築・都市の設計を行う人材を育む。

人類の遺産である古建築や集落の保存・復元から、現代都市の象徴たる超高層建築の開発、さらには快適な生活条件をつくる建築設備の研究、地震や台風など災害に対する安全性確保まで。建築学は、その取り扱う範囲が極めて広く、そして社会とのかかわりも密接だ。
そのため技術的な問題のほかに、社会的、経済的、心理的な要素を取り入れることもあり、造形的・芸術的分野も含む、幅広い視野と探究心が求められる。

3年生の時間割例[夏学期]

修士課程終了後の進路


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