都市工学科 Department of Urban Engineering

気候・風土・文化の多様性を踏まえ、未来視点で都市・環境をデザインする

都市工学科は1962年に設立された、工学部の中では比較的新しい学科です。
その目的は、都市のフィジカルプランナーの教育・養成と、都市問題に対処するための工学的研究・教育です。
フィジカルプランナーとは、物的・空間的存在によって形成される環境を計画・デザインする人材を指し、研究対象は都市や広域圏(農山漁村を含む)や国土全体、地球環境全体に及びます。
人の暮らしに関わる研究領域であり、工学技術のほか、法学、経済学、社会学、歴史学、心理学、美学、哲学といった社会科学や人文科学と密接な関係にあるのが特徴となっています。

習得できる力

コースの説明の図
 

修士課程修了後の進路

都市計画やまちづくり、環境マネジメント、環境技術開発に直接的に携わる仕事のほか、多くの卒業生が商社や銀行などに就職しており、選択肢は幅広い。就職活動では学生の自主性を重んじている。学部生の約3分の2が修士課程に進学するのも特徴の1つ。
※グラフは平成18~27年度の都市工学専攻・修士課程修了者の進路

修理過程修了後の進路のグラフ

主な勤務先:国土交通省、環境省、三井不動産、三菱地所、住友不動産、東京建物、鹿島建設、JRグループ、東京都ほか

3年生の時間割例「S1S2」
※破線の上がS1、下がS2

時間割の図

都市工学科のカリキュラムの特色は「演習」。様々な講義を通じて幅広く知識を身につけ、習得した知識・スキルを演習で活用し応用力を養う。街に出たり、自然環境の中で問題意識を持って見たり、学んだり、知恵を絞ることで、将来に生きる経験値となる。

現代の社会的要請を受け都市について深く考える

 都市工学科は東京大学で唯一「都市」について専門的、総合的に教育、研究している学科です。
 選択できるコースは2つあり、都市を支える「都市環境工学コース」と、都市を構想する「都市計画コース」で構成されています。カリキュラムは分野別に深く学ぶ「講義」と、分野を統合した学びの場として「演習」があります。中心となるのは演習で、現実の課題に取り組み、自らの考えで都市問題や環境問題を捉え、分析・構想する力を養います。
 都市問題や環境問題は多様化しており、その対象範囲は都市から農山漁村を含む広域圏、国土全体、地球規模にまで及びます。研究室は全部で16あり、都市計画コースに10 室、都市環境工学コースに6室で構成されています。例えば土地利用、交通、デザイン、防災、地球環境、水環境、廃棄物など、一人ひとりが興味を持った分野について学ぶことができます。
 都市問題や環境問題に欠かせない調査、解析、計画、デザインについての手法、技術を専門的かつ総合的に身につけられるのが特徴。その結果、皆で集まって暮らすかたちとしての「都市」を考え、皆でつくり出す私たちの「社会」の全体像を見渡すことができるようになります。こうした学びを積み重ね、都市の「スペシャリスト」から社会の「ジェネラリスト」まで、幅広い人材を育成しています。

鈴鹿市における土地利用構想の検討風景

鈴鹿市における土地利用構想の検討風景

“人々の暮らす場”が実験室
未来の都市・街をつくる

都市工学科には、都市を構想する都市計画コースと都市を支える都市環境工学コースの2種類があり、16の研究室がある。
村山顕人准教授の研究室では、土地利用を中心とする“都市スケール”の計画立案や再開発・改善・保全を含む“地区スケール”の市街地再生に関する研究と実践に取り組んでいる。例えば幹線道路に囲まれた16ヘクタール四方の地区の再生事例では、当事者が主体的に参加できる仕組みをつくり、まちづくり構想を策定し、それを実現する体制を構築、運用するところまでを支援する。

[都市計画研究室(大方・村山研究室)] 村山顕人准教授

人口減少や超高齢化、環境問題や自然災害の深刻化といった数々の課題に直面する都市空間を、いかにつくり、維持管理するか。都市の空間像の構想と実現方策、都市空間の変容過程とそれへの効果的介入、多様な主体の協働手法などを主たるテーマにして研究に取り組んでいます。

http://up.t.u-tokyo.ac.jp/index-j.html

都市の未来を描くのが仕事他大学にはない魅力も

 もともと航空宇宙工学を志望していたという村山顕人准教授。ところが、米国から帰国して見た東京の混雑ぶりに驚きを覚え「遠い宇宙よりも身近な環境を考えよう」と、都市計画の道に進んだという。
 一度東大を離れて気づいたのは、東大ほど都市工学が細分化され扱われている大学・大学院はないという点。都市を深く学び、都市を構想する実践的なスキルを身につけられるのは、東大ならではの特徴である。
 「教室や研究室を出て、鳥の目、虫の目で多角的に都市や街を眺めながら、多くの人と共に未来を描けるのが、この分野の面白さです」

工学部14号館の屋上にて
工学部14号館の屋上にて

各研究を統合し時代に応じた都市を構想

 都市が抱える様々な課題の解決に取り組む都市工学。その現状について、村山准教授はこう説明する。
 「超高齢社会や人口減少時代が到来した現在は、成長期につくられた都市のあちこちで社会的にも物理的にも空洞化が起きています。例えば人口減少が著しい自治体では、財政難からインフラやハコモノの維持が困難になり、都市の経営が立ち行かなくなる事態が起きています。都市計画という観点から見ると、社会の成長を前提とした都市計画から転換すべき時期がとっくに来ているといえます。そこで私たちは、いかにして街を維持管理しやすい形に変えるか、環境問題や自然災害にもしなやかに適応できるようにするかを検討し、新しい都市の姿を提案していくことを目指しています」
 都市工学科には16の研究室があり、土地利用、都市デザイン、都市交通、防災・減災、水や緑の保全・創出、コミュニティ形成など、それぞれ独自の視点から都市の空間や都市の環境に関する研究を行っている。その中で村山准教授は、実際の都市のマスタープラン(基本計画)の策定、市街地再生など、実務に深く関わる研究を行っている。ゆえに“都市”“街”が実験室だという。

計画策定の3側面
計画策定の3側面とそれらを支える技法を端的に示した図。科学的技法、創造的技法、政治的技法を組み合わせることで計画の完成度を高めていく
名古屋市錦二丁目のまちづくり構想
名古屋市錦二丁目のまちづくり構想

経済学、社会学、心理学…人文科学的な面白さもある

 「都市空間の計画策定とは、将来を見据え、いろいろな要求を両立させながら、空間的解決策を導き出す取り組みです。計画策定には3つの観点が欠かせません。1つ目は現状分析と将来予測、2つ目が空間構想と空間構成、3つ目が合意形成と意思決定です」と村山准教授は語る。
 村山准教授が携わる鈴鹿市の都市マスタープラン策定を例に説明する。
 鈴鹿市の現状分析と将来予測から見えてきたのは――「住宅や工場などが散在している現状」「人口減少が進むとインフラの維持が困難になるという予測」「南海トラフ巨大地震への備えも必要という気づき」など。
 これらの課題に対し、鈴鹿市都市計画課をサポートする形で、村山准教授は国内外の成功例などを参考にしながら解決策を練り上げていく。
 空間構想や空間構成では、住民や事業者といった利害関係者の要求を満たす計画案を検討し、具体的な都市の形として空間的解決策を図化していく。その計画案を市民に公開し意見を募ることで、専門家と市職員を中心とした議論では見えなかった隠れた課題をあぶり出していく。
 当然ながら「工場地帯はもっと広く」「この農地や緑地は保全すべき」といった要望も出てくる。それらに耳を傾け、計画案をブラッシュアップし、説明会や都市計画審議会での議論を通じて、合意形成や意思決定へと進んでいく。つまり、プランナーには工学的な技術だけでなく、社会学や経済学、心理学といった人文科学的な方法も必要となってくる。

商業や工業、防災や減災、居住地、交通など様々なレイヤーで地図を作成し、重ね合わせることで未来の都市の姿を空間化した

山積する社会課題に取り組める人材が求められている

 村山准教授は、国内外の事例を広く集め、実際のプロジェクトで応用していく研究スタイルを取っている。
 例えば、計画エリアの住民や事業者、行政機関ほか、多様な価値観を持つ当事者を巻き込む方法、円滑に合意を形成する方法、高度な計画案をつくる方法や技術を開発し、一般化していく。方法や技術を他のプロジェクトに活用するのが狙いだ。
 学生は3年生の演習の中で、都市計画の実践を模擬的に体験する。2016年は週3回演習があり、10週間かけて横須賀市の都市マスタープランを作成した。「プランナーの育成は教育目的の一つなので、学生たちに現場との接点を意識して持たせています。実務と教育と研究が一体化している点が、都市工学科の特徴です」と村山准教授。出来上がったプランは自治体に提出し、職員からコメントを集め、社会での価値を確かめる機会となっている。
 村山准教授は、他にも名古屋市、静岡市、松戸市、西東京市など、全国の都市計画に関わっている。自治体スケールだけでなく、もっと小さな地区スケールの再生や再開発の案件に参加することも増えている。
 名古屋市錦二丁目のプロジェクトでは「自分たちのまちを何とかしたい」という住民たちの自主的な活動をサポートし、まちづくり構想を策定し、名古屋市低炭素モデル地区事業の認定取得へと導いた。
 日本の都市計画は、世界的にも注目されている。特に首都圏は3500万人以上が暮らす巨大都市圏だが、これだけの公共交通網が機能している首都圏は他に例がないという。
 「これから人口の増加が想定されるアジアの都市に、都市計画のノウハウを提供することも可能です。反対に日本全体としては急激なスピードで超高齢化・人口減少が進んでいきます。先進諸国がいずれ通る道と言われており、日本全体が世界から注目を集める研究対象なのです。共同研究を行うパートナーからは“日本の研究者には最先端の都市の状況とそれへの対応策を発信していくミッションがある”と言われています」

圓山さん写真

魅力的な都市空間をつくりたい!
ダイレクトに都市に貢献できる分野です

大学院工学系研究科 都市工学専攻 修士課程2年
都市計画(大方・村山)研究室 圓山王国さん

文科一類から工学部、さらに都市工学を選んだ理由は?

知らない場所に行ったり、地図で調べたりすることがもともと好きでした。大学入学時に、まち、地域に関わりながら社会に貢献したいという意識を持っていました。学部1年の秋に都市工学科主催の講義を聞き、直接的に都市を対象として研究や実践をする分野があると初めて知りました。「あ、ここだ!」と思いました。都市計画研究室は、人口減少や経済の低成長などに対応しながら、持続可能な都市の在り方を探究することがテーマの一つ。ここなら僕のテーマを追求できると思ったのです。

院進学時に、この研究室を選んだ理由は?

研究室の気風が期待通りだったからです。研究テーマの選び方も手法も、基本的には自由に決められます。僕らの興味・関心を尊重していただけます。また、研究室会議では、一人ひとり、じっくり時間をかけて議論します。広い視野で、研究を進めることができます。

圓山さんの卒論のテーマは、繊維問屋街の変容ですね

はい。繊維産業が斜陽化する中で、名古屋市内と東京都内、2カ所の繊維問屋街で、どのように空間変容が生じていたのか。それに対応して、どのような再生の取り組みが展開されたのか明らかにするというものです。現在は、東京23区を対象に、空間変容の実態と要因について研究しています。今後、より良い空間計画の在り方の探究に役立てたいと考えています。

具体的な研究の進め方と面白さを教えてください。

現場を見たり、その土地の方たちのお話を聞いたりして、状況を把握します。現地に足を運ぶことで初めて分かることがたくさんあります。そのまちが、どのようにして今の形になったのかを、地図の上や地上から様々な視点で見る。すると、ある地域の空間変容が、近くの大規模再開発の影響なのか、地価が上がり過ぎたせいなのかなど特徴が見えてくる。まちを対象に謎解きをする面白さがあるわけです。

研究室に、じっとしてはいないのですね。

実際にまちへ繰り出して、現場での実践を通じて学ぶことができるのが都市工学の面白さです。おかげで、物事を多面的に捉える力、様々な意見を整理しまとめていく力がついたと思います。いずれ社会に出ても役に立つと思っています。

研究テーマで取り上げる地区の状況をマッピングする圓山さん
松戸市小金原地域の公共施設再編の検討のために開催されたワークショップに参加した研究室のメンバー(準備風景)
ページトップに戻る