システム創成学科 Department of Systems Innovation

システム・イノベーションを駆使して
新たな工学教育へ挑戦する

私たちは現在、複雑で多様な地球規模の様々な問題に直面しています。
文明の持続・発展のためには、世界全体として新しい解決法を見いださなければなりません。
しかし、これらの課題は、20世紀に構築された科学・工学技術のみでは対応できず社会科学などの知識・技術も融合した俯瞰的視点を持ち、革新的なディシプリンの創出・深化・総合化をする必要があります。
システム創成学科は、自然科学・工学から社会科学までを包含したカリキュラムで、複雑な社会の要望に対応できる多彩な能力を持つ人材を養成しています。

新しい「知」を創造できる4つの新しい学習体系

新しい「知」を創造できる4つの新しい学習体系

修士課程修了後の進路

就職先は製造、エネルギー、官公庁、金融、コンサルティングなど、産官学の各方面に広がっている。リーダーシップが求められる仕事が多く、身につけた問題解決力を発揮して活躍する卒業生が増えている。

修理過程修了後の進路のグラフ

主な勤務先:経済産業省、環境省、国土交通省、東京電力、大阪ガス、野村総合研究所、三菱重工業、日本IBM、日立製作所、東芝、ニコン、ファナック、大正製薬、アクセンチュア、ゴールドマンサックスほか

3年生の時間割例「S1S2」
※破線の左がS1、右がS2

時間割の図

トップダウン的な専門知識の伝授というスタイルの教育をやめ、学生が将来出合うであろう複雑で不明確な諸課題に対して「どのように対応するか」ということに力点を置いた教育を志している。そのために、知識や事実、法則、原理などのKnow-Whatに加え、それらの知識を使う方法、生かす方法、つまり「知」としてのKnow-Howを積極的に習得することを目標としている。

「知」の再構築と合流化を目指して

 21世紀の特徴の一つは複雑な価値観の時代であると言えます。持続可能な地球環境を維持しながらも、国家を含むいろいろな組織が、問題解決能力を獲得し、新しい問題解決法を編み出し、新しいシステムを創造し、ハーモニーとリズムをつくりながら社会と経済と環境に対してポジティブな「答え」を出していかないかぎり、日本と地球の繁栄はありません。
 私たちが目指すのは、科学的論理性を中心軸に据えた新しい教育と研究の領域「システム創成」です。システム創成学科のカリキュラムは、産業や経済や行政の多様な問題を解決するだけではなく、もっと包括的な大局解を求め、大きなイノベーションを引き起こすことができる人材を養成するように設計・デザインされています。
 高度にソフト化、システム化が進行する現代社会において、知識の伝達を中心とした従来型の産業基盤は過去のものとなり、設計、開発、研究に加えて、企画、教育、行政、プロデュース、コンサルティングなど、システム創成学科を卒業する学生の活躍の場は広がっています。同時に、基礎工学に関する解析的能力に加え、論理的、システム的な思考力、統合力、リーダーシップ、コーディネーションといった能力が期待されています。
 システム創成学科では、このような新しい社会状況に柔軟に対応でき、能力を発揮できる人材を育成しています。

平林紳一郎准教授

平林准教授は学生時代から海洋の流れや渦の研究を手掛けてきた

再生可能なエネルギーの確立を目指し
海洋という広大な領域を探究

地表の7割を占める海洋は環境問題と密接に関わりを持ち、膨大な資源やエネルギー、空間を有している。
特に四方を海に囲まれた日本にとっては極めて重要な研究対象だ。
平林紳一郎准教授の研究室では、海洋における再生可能エネルギーの開発、海中や海底下の資源開発、海洋空間利用の3つに取り組んでいる。

[鈴木・平林研究室] 平林紳一郎准教授

情報理論と熱力学を融合させた「情報熱力学」を研究しています。
物理学に立脚して、高効率な熱機関の設計原理の理解や、これまでにない情報処理技術の創出に貢献するのが目標です。

http://www.orca.k.u-tokyo.ac.jp/SuzukiLab/Home.html

従来の欠点をカバーする新しい風力発電ファーム

 再生可能エネルギーの一つである風力発電。日本では陸上風力発電が多く設置されてきたが、近年は洋上風力発電に注目が集まっている。洋上は障害物がなく、風況の良い適地が多い上に、近隣への騒音や景観への影響も少ないことから、欧州では積極的に導入が進んでいる。
 現在、主流の技術は海底に柱を立てる着床式だ。欧州は遠浅のエリアが多く、工事を行いやすいが、日本は急峻な海底地形のため建設費が膨らむ。また、老朽化などで発電を止めたあと、海底に据え付けたコンクリートの基礎の撤去方法など、環境への影響が大きいと心配する声もある。
 そうした中で着々と研究が進められているのが“浮体式”洋上風力発電だ。風車を浮体に載せて浮かべるので、設置場所の水深は問わない。浮体が流されないためにチェーンを使って係留する必要はあるが、着床式と比べて海洋環境への影響は圧倒的に少ない。
 「東日本大震災をきっかけに、福島県沖合に浮体式洋上ウィンドファームを建設するための実証研究が始まりました。浮体式かつファーム規模で運用するのは世界初です。先日、その第1フェーズが終了し、技術的には実現可能であることが分かりました。今後取り組むべき課題はコスト削減です」

浮体式風車の実用化に向けて解決すべき課題

 鈴木・平林研究室では運動および係留にかかる研究と、ウィンドファーム周辺を運航する船舶との共存に関する研究を担っている。
 洋上浮体構造物は歴史が古く、石油掘削プラットフォームなどで豊富な実績を有する。風力発電でもその知見が生かせるが、コストに対する考え方は決定的に違う。石油掘削は多大な利益を生むため、軽度のトラブルでも掘削が滞らないように手厚く修理を行うことが可能だという。一方で、風力発電は収支上そこまで手をかけられない現実がある。コスト削減はもちろんのこと、トラブルを起こさない仕組みが求められている。
 平林准教授らが取り組んでいるのは浮体を係留するためのチェーンの長寿命化だ。
 「流れがある水中では物体の周辺に渦が発生し、その渦が剥離するときに荷重がかかります。海底掘削では直径が数十センチメートルから1メートル、長さが1000メートルから3000メートルくらいの管を使いますが、海洋中では管の周囲に渦ができ、剥離時の荷重で管が振動します。これを渦励起振動と言います。管は硬いスチール製ですが、長さに対して直径が小さいので、渦励起振動でぐにゃぐにゃと曲がり、一定の限度を超えると金属疲労でポキンと折れてしまいます。これと似たことが係留用チェーンでも起こり得ます」
 洋上では、浮体の周りに発生した渦によって、浮体に渦励起運動と呼ばれる周期的な運動が発生する。この運動によって浮体を係留しているチェーンには張力変動が加わり、疲労や摩耗により最悪の場合は破断する可能性があるというわけだ。
 将来的なウィンドファーム構想では20年間使える浮体および風車を20億円でつくろうとしている。これに対して、係留用チェーンの交換には1本2億円程度かかるという。高コストになるのは「交換用のチェーン代金だけでなく、船舶手配などの費用がかかる」ことが原因だ。平林准教授らは渦励起運動の挙動を研究することで、チェーンの長寿命化を図りたいと考えている。

水中では物体周辺に渦ができ、これが浮体運動を励起する
平林紳一郎准教授

海洋には解明すべき未知の事象がたくさん!

 渦励起運動の存在は以前から知られているが、その全容は解き明かされていない。
 「浮体構造物の基本的な運動特性を調べる実験は10分の1スケールの模型を実験用プールに浮かべて行います。十分に高精度のデータが取れますし、波や風といったパラメータを反映させて、実寸にスケールアップしても成立させられる法則も分かっています。ところが、渦励起振動についてはスケールが与える影響が大きく、この法則が適用できないのです。現在のコンピューター技術では完全なシミュレーションはできませんので、実寸でデータを取るか、非現実的な速度の流れをつくって実験するか、特異な実験を重ねないと全容は明らかにできないかもしれません」
 渦励起運動は、柱を海底に立てる着床式洋上風力発電や予算が豊富な石油掘削プラットフォームではそれほど大きな問題になっていない。浮体式という新しい技術に挑戦するからこそ、顕在化した課題だといえる。実は、ブラジルのサンパウロ大学もこのテーマに関心を寄せている。彼らは資源掘削が目的なのでターゲットは違うが、同じテーマに挑んでいるので共同研究や人材交流による緊密な情報交換をしているという。
 「浮体やチェーンに対する渦の影響を抑える方法を考えています。物体の形状あるいは喫水の深度によって周辺の流れが変わりますし、渦の形状や荷重の度合いも変わります。ただし、構造物として必要な条件もあります。例えば、流れを受ける部分が細ければ、渦励起運動は発生しにくいですが、細すぎると強度を保てません。設計の最適化にはどのような条件を与えればいいのか、模型を使いながら研究を進めています」

曳航水槽での渦励起運動の実験の様子
曳航水槽での渦励起運動の実験の様子
福島県沖で進められている浮体式洋上風力発電システムの実証研究

研究をしながら方法論を身につけてほしい

 平林准教授は学生時代、海洋環境工学を専攻し、海底2000メートルの中心層において、熱や物質がどのように流れるかなどを研究していた。渦励起運動は現職に着任してから着手したテーマである。着任当時、ちょうどウィンドファーム実証研究が動き出すところで、渦の研究ならば自分の強みを生かせると考えてプロジェクトへの参加を決めた。
 「学生時代とテーマが変わっても、学んだことは確実に生かせます。我々の役割は問題を提起し、その解決方法を提案すること。実際に課題を解決するのは他の人でも構いません。何が本質で、どうすれば解決できるのかを考えられるかが大切なのだと思います。それは教科書に学ぶことではないので、学生には研究を通して、課題解決を考える素養を身につけてほしいと思っています」

メタンハイドレートなど海洋資源開発のプロジェクトにも携わる
高瀬康一さん

日本のエネルギー問題に着目し 
その解決を目指して進路を決定しました

システム創成学科 環境・エネルギーコース 平成29年卒業 
大学院新領域創成科学研究科 
海洋技術環境学専攻 修士課程1年 
海洋空間計画研究室 高瀬康一さん

進学を決めたきっかけは東日本大震災だそうですね。

大学に入学したのは2011年、東日本大震災の直後でした。電力不足で計画停電が実施されたり、原子力発電施設が問題になったりと、電力を取り巻く環境で様々な変化が起こる中で、エネルギーは特に大きな問題だと感じました。進学振分けでシステム創成学科を選んだのは、原子力や海洋資源、再生可能エネルギーなどを幅広く扱っているため、学ぶ意義があると考えたからです。進学してとても満足しています。特に興味深いのは海洋分野です。浮体式洋上風力発電はもちろんですが、海洋環境の研究も興味深いですね。

浮体式洋上風力発電について研究内容を教えてください。

僕が担当しているのは浮体式洋上風力発電の周辺を航行する船舶のシミュレーションです。ウィンドファームの実証を行っている海域は船舶の航路と近く、もしも船舶が操縦不能になれば、大事故が起こる可能性があります。研究は実際の海域の航行データなどを引用し、浮体と船舶の衝突事故はどのくらいの確率で起こるのか、衝突の影響はどのくらいか、係留用チェーンが断裂する可能性はあるか、浮体が漂流したら事故は連鎖するかなどをコンピューターでシミュレーションしています。

実際に運用する際に役立ちそうな研究ですね。

土台となるプログラムは研究室の先輩から代々受け継いでいるもので、僕はより現実的なシミュレーションができるように、ブラッシュアップを図っています。具体的には、船舶が流体から受ける力がやや過小評価されていたので、そこを見直し、より現実的な結果が得られるように工夫をしています。学部時代は時間が足りず実験が不十分だったので、修士課程ではきちんと実験データを踏まえたプログラムを提案したいと思っています。

高瀬さんが描く将来の夢は何でしょうか?

エネルギー問題を解決したいと考えて進路を決めてきました。これからもエネルギー分野で自分が身につけた知識を生かしていきたいと考えています。日本は資源に乏しい国ですが、海洋や海中、海底には高いポテンシャルが眠っています。この立地を生かさない手はありません。洋上風力発電の実証ではなく、実現のために貢献したいですね。

エネルギー問題に関心を寄せたことが工学部を選ぶきっかけになった
研究室での集合写真
研究室での集合写真
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