機械工学科 Department of Mechanical Engineering

「デザイン・エネルギー・ダイナミクス」
社会のための科学技術の創造

機械工学科は1874年の創設以来、機械工学分野に多くの人材を送り出し、日本の工学の中心であり続けてきました。戦後の経済成長期にあって、機械系では主に、鉄道、自動車、造船、航空機、重機、電機、鉄鋼など各種プラントなど、日本の基幹産業をつくり支える技術者の育成を担ってきました。
現在では、産業界の進展に対応すべく、教育、研究分野も変貌をとげつつあります。
機械工学科では、機械工学の知識を幅広く選択・融合・適用し、社会が希求する重点分野を担う人材を育成しています。

多様な分野で応用可能な技術を身につける

コースの説明の図
 

機械工学の学術基盤は、材料力学、熱工学、流体力学、機械力学の四力学を中心としたアナリシス(分析)の学術コアと、設計や生産などのシンセシス(統合)の学術コアとで織り成される縦糸と横糸のマトリクスである。このゆるぎないマトリクスの上に、多彩な応用技術に関わる知識体系が築かれている。

修士課程修了後の進路

機械工学科・機械工学専攻では就職の学科推薦を行っており、例年ほぼ半数の学生は学科推薦で就職する。その進路は、鉄道、自動車、造船、航空機をはじめ、半導体やバイオテクノロジーなど時代の要請を受けながら広がっている。
※グラフは平成27年度の機械工学専攻・修士課程修了者の進路

修理過程修了後の進路のグラフ

主な就職先:世界銀行、アジア開発銀行、ユネスコ、東日本電信電話、NTTデータ、JFEスチール、日立造船、JFEエンジニアリング、新日鐵住金エンジニアリング、前田建設工業、清水建設、大成建設、JR東日本、東京ガス、国土交通省、特許庁、経済産業省ほか

3年生の時間割例「S1S2」
※S1とS2を通しで実施

時間割の図

2年生の後半~3年生の前半では数学、材料力学、流れ学、熱工学、基礎力学など機械工学の基礎科目を勉強するとともに、実践的トレーニングを経験する。3~4年生では、企業で短期インターンシップによる就労経験を積んだ後、機械工学の先端・専門的な講義、ものづくりのための創造性を養う演習が設けられている。

「分析」と「統合」の学術コアが織り成す新価値創造へ

 機械工学のミッションは「社会のための科学技術」を実践し、社会が直面する複雑な問題を解決することにあります。現在では、環境・資源制約の下で、安心安全で豊かさの感じられる持続的な社会を構築することにその重点が置かれています。学問・学術的には、伝統的な機械工学自身を深めると同時に、学際分野・基礎科学と連携して新領域を開拓し、社会に求められる技術や価値を創造するための基盤的な知の体系を築いていくことを常に目標としてきました。
 例えば、生体工学、環境工学、分散エネルギーシステムの研究などは、時代の要請とともに広がってきた分野であり、分子熱工学、分子動力学などは現象解明の観点からマクロからミクロへと研究対象が移行して発生した分野です。
 対象とする機械のスケールも、微細機械システムからインフラストラクチャーまで多様化しています。機械系学科では、これらの研究分野の進展がカリキュラムにも反映されるよう、常に刷新して対応する努力が行われています。
 このように機械工学科では、学問研究や社会事象を俯瞰して機械工学の視点で共通原理・法則を導出し、他の学問分野や社会と密接に連携しながら、新産業創出を担う人材を育成します。

「機能向上に寄与する“ものづくり”を提案したい」と長藤圭介准教授

単に早くて安いつくり方ではなく
機能を高めるつくり方を開発したい

機械工学科では様々なスケールの機械を扱っているが、この研究室では「ものづくり」をテーマに製品やサービスの設計、それらを実装する技術や方法論などを探究する。長藤圭介准教授のチームは「微細加工」が専門。燃料電池や3Dプリンタなどの機能向上に資する成果を目指して、日々実験と検証を繰り返している。

[中尾・長藤・上田研究室] 長藤圭介准教授

中尾・長藤・上田研究室は「ものづくり」の研究室です。取り組んでいるテーマは数多く、系統はそれぞれ異なりますが、どれも製品やサービスを設計し、世に送り出すための技術や方法論を追究しています。

http://www.hnl.t.u-tokyo.ac.jp/top

活用が広がる燃料電池理論効率90%は達成可能か

 燃料電池の原理が発見されたのは200年以上も前のこと。電池といっても、アルカリ乾電池のような放電のみの一次電池やリチウムイオン電池のような充放電を行う二次電池とは根本的に機構が違う。
 負極に水素などを補充し、その化学エネルギーを電池内部で電気エネルギーに直接変換して取り出す発電装置である。
 燃料電池は原理的にエネルギー効率が高い発電方式だが、中でも高温で作動する固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)は特に効率が高い。補充物質に水素だけでなく、炭化水素やアルコールなどを用いることができるのもメリットで研究開発が進められている。
 長藤圭介准教授は微細加工の観点から、SOFCのポテンシャルを引き出したいと考えている。
 「SOFCは理論上、90%の効率で動くはずですが、現状は50%程度にとどまっています。理由の一つは電極の微細構造がランダムで、イオンと電子の流れがスムースではないこと。当研究室では構造制御により、SOFCの効率向上に貢献したいと考えています。また、より良い材料を探している研究者や、系全体の制御を最適化しようと取り組んでいる研究者もいます」
 SOFCは、燃料極に「酸化物イオン」「電子」「ガス」の3種類の物質が流れることで反応が起こる。燃料極をつくる際にはセラミクス材料のジルコニア(YSZ)と、金属材料のニッケル(Ni)を、樹脂に混ぜ込んで焼き固める。YSZとNiは燃えずに残るが、樹脂は燃焼し、そこが空隙になってガスの通り道になる。
 こうして出来上がった燃料極では、イオンが流れるのはYSZが連なったところだけで、電子が流れるのはNiが連なったところだけとなる。連なりが途切れればイオンや電子は流れず、連なりが屈曲していれば流れが遠回りになる。これが効率低下の原因の一つだ。つまり、YSZとNiが途切れず整然と並んでいれば、イオンと電子はスムーズに流れ、高い効率に結びつくというわけだ。

ランダムに並ぶ粉体の構造を制御することで性能向上が期待できる

ミクロの世界でも金型や遠心分離機が活躍

 この課題に対して、長藤准教授は2つのアプローチを考えている。
 一つは磁力を使う方法。基本的な原理はシンプルだ。YSZとNiと樹脂が混合している流体に磁場をかけてNiを一定方向に配列させるだけ。YSZは磁場の影響を受けるわけではないが、Niが配列する際に押しのけられる格好でYSZも動き、結果的にYSZとNiがそれぞれ整列して、イオンと電子が流れやすくなる。
 もう一つはミクロン(1000分の1ミリメートル)オーダーの金型でYSZのピラー(柱)構造をつくり、ピラーの間にNiを並べる方法。まずはYSZの粉体をスクリーン印刷にかける。スクリーン印刷とは隙間が空いた型を置き、その上から対象物質を押し付けることで、隙間から物質が通り、その部分だけプリントされる手法だ。
 今回は隙間が狭く、押し付けても粉体が十分行きわたらないため、プリント後、遠心分離機にかけている。こうして出来上がったYSZのピラーの間にNiを入れていく。このときメッキの技術を使うことも可能だ。
 「YSZとNiを別々に扱うので、ランダムに混じり合うことはないのですが、立体構造の隅々まできっちりと粉体を入れ込まないと隙間ができてしまい、やはりイオンや電子の流れが悪くなります」

議論の多い研究室だという
波うち際
燃料電池の電極に使用するジルコニアとニッケルの粉体。小さな円形のジルコニア基板にプリントして実験用電極とする

微細構造の制御により電池の可能性を引き出す

 さらに、YSZとNiの物理的特性を利用し、材量の配合という観点から高効率化を図ることもできる。
 「イオンと電子を同じ量で流したいので、理論的にはYSZとNiの体積比を1万:1にしたい。なぜならNiの電気伝導率はYSZのイオン伝導率の1万倍だから。YSZもNiもある大きさの粒子を用いるため、Niが少な過ぎると連なりが途切れてしまうので、現状50対50の量で入れています。前述の方法でそれぞれの材料が配列できれば、Niはもっと少なくできるはず」
 YSZとNiは熱膨張率も異なる。先述の通り、燃料極をつくる際には樹脂を焼き切る工程がある。このときの熱膨張率はNiのほうがYSZよりも大きいので、Niが多く含まれるほどサイズの変化が激しく、構造的にもろい。言い換えれば、Niを少なくすれば、強く、耐久性に優れた燃料極ができるというわけだ。
 「磁場を用いた方法でこれまでに80対20でも同程度の効率が得られています。最終的には90対10も可能ではないかと見込んでいます」

金属3Dプリンタの研究にも注力している

基礎研究と共同研究ではどちらが学生に必要か

 長藤准教授は燃料電池のほかに3Dプリンタの研究も行っている。今注力しているのは粉状の材料にレーザを照射して溶かし固める粉末焼結積層造形法の研究だ。レーザの使用や三次元構造といった違いはあっても、微細加工という観点では燃料電池の研究と通じるものがある。いずれのテーマも産業界の期待が大きいだけに、企業との共同研究も多いという。
 「学生が共同研究から学ぶことは多いでしょう。ただ、共同研究は企業と一緒にスピード感を持って進められる反面、道筋が整い過ぎていて単純作業になりがちな面もあります。一方、基礎研究は何事も自分で考える本来の研究の姿といえます。道なき道ゆえに迷いが出て停滞することもあるので、どちらがよいとは言い切れません。ただ、近視眼的な成果を求めるのではなく、日本の産業を盛り上げる研究だという意識を持って挑戦してほしい」
 この研究室は、長藤准教授のほか4人の教員が所属する大所帯。毎週金曜にはものづくりに関する動画を見ながら議論をする会を設けているほか、卒業生との交流会もあり、世代を超えて議論が盛り上がるという。その研究にかける熱い思いこそ、明日の社会を生み出す原動力になるのかもしれない。

松葉さん写真

共同研究を通じて再認識した
未知の領域に挑む大学の研究

大学院工学系研究科 機械工学専攻 修士課程1年
中尾・長藤・上田研究室 東坂達也さん

機械工学科を選んだ理由を教えてください。

高校時代から理数系が得意だったので理科一類に入学し、進学振分けでは迷わず工学部を選びました。机に座って勉強するよりも手を動かすほうが得意でしたし、ものづくりに関心があったからです。機械工学科については漠然と様々な大型機械を扱う学科だと思っていましたが、実はミクロの研究も多く、奥深さを感じています。現在手掛けている研究もミクロな世界で、直径数ミリメートルの管の流量を測定するセンサーをつくろうとしています。今はまだ原理確認レベルですが、この先はより小さい管に挑戦するとともに、素材や形状なども工夫したいと考えています。

大学院進学は早期から決めていたのでしょうか?

学部の時に一度就職を考えたことがあります。研究をここで終わらせるのはもったいないという思いもあったのですが、最終的には理系の修士号を持つ父から「自分のやりたい研究に挑戦できるのは大学院だけだ」と言われたことが決め手になりました。実際、大学院では好きな研究に取り組めていますし、2017年10月からはスイスに3カ月間留学します。現地では自律型ロボットの制御や製造を研究する計画です。

研究室の先輩からは刺激を受けているそうですね。

研究は楽しいですが、成果が出なくて試行錯誤を繰り返すことも多いです。そういうとき、研究室の先輩に相談すると的確にアドバイスしてもらえて助かっています。今研究室にはたくさんの後輩がいますが、他人の研究に助言するのは思っているよりも難しいです。改めて先輩たちの偉大さを感じています。

これから進学する後輩にぜひアドバイスを。

工学部は実際にモノを見て、触れることができる学部です。機械工学科は特にたくさんのモノに触れますし、企業との共同研究が多いのも特徴ではないでしょうか。僕は企業との交流を通して、企業はモノをつくることが目的であり、大学は分からないことを明らかにすることが目標なのだと感じました。工学部では基礎研究から社会での応用に近い領域まで、幅広く経験できると思います。
大学でしかできないことは様々あると思います。課題を自ら見つけてそれを自らで解決する達成感はモノをつくる工学部の研究では大いに体感できるのではないかと考えています。

実際に手を動かして実験を重ね、試行錯誤することが研究の醍醐味
東坂さんは直径数mmの管の流量を測定するセンサーを研究する
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