電気電子工学科 Department of Electrical and Electronic Engineering

地球環境から人工知能・ナノテクまで、
社会と人類の未来をデザインする

大学としては世界初の電気系専門学科として1873年に誕生したのが電気電子工学科です。
歴史と伝統を継承し、常に時代を切り開く新しい概念や先端技術を生み出してきました。
環境エネルギー、人工知能、ナノテクなど、様々なキーワードを核として発展し、電気電子工学科は常にそれらの改革の中心にいます。
電磁気学・量子論を中心とした物理を基礎としながらも、電子情報工学科と連携することで、物理的側面と数理的側面を融合した教育を行っています。

「物理」を基盤にした広範囲な教育

コースの説明の図
 

現代社会を担う科学技術の基礎から最先端テクノロジーまで学ぶことができる。広範囲なテクノロジーを学ぶことで、次世代の科学技術、産業基盤を支える人材の育成を狙っている。

修士課程修了後の進路

80%を超える学生が修士課程へ進学。修士課程修了後は約80%が電気・電子・情報産業へと就職していく。約6000人の卒業生が社会で活躍していることもあり、最近5年間に限っても200を超える企業や研究機関への就職実績がある。
※グラフは平成27年度の電気系工学専攻・修士課程修了者の進路

修理過程修了後の進路のグラフ

主な就職先:日立製作所、三菱電機、ファナック、JR東日本、三菱重工業、トヨタ自動車、日産自動車、JAXAほか

3年生の時間割例「S1S2」
※S1とS2を通しで実施

時間割の図

電気電子工学科の特色は、物理系ながらもアルゴリズムやプログラミングが学べる点。というのも、3年のS1S2までは、電子情報工学科とも共通性の高い基礎科目を履修することができるから。ハードからソフトまで、最先端技術の基礎を切れ目なく学習できることが電気電子工学科の最大の魅力である。

ナノテクからAI、宇宙まで世界の最先端を覗ける学科

 電気電子工学科では、次世代の科学技術や産業基盤を支える人材を育成しています。例えば、小惑星探査機「はやぶさ2」や国際宇宙ステーションの開発・運用など宇宙開発の様々な分野や電気自動車の開発でも、電気系工学専攻の教員や大学院生、卒業生が活躍しています。電気エネルギー輸送の大容量化、高効率化を可能とする世界最高110万ボルトの送電技術は、本学科の教員が取りまとめ世界標準化を実現しました。また、人工知能、IoT、自動運転の中核をなす脳型LSIや最先端センシングデバイスの研究でも、本学科の教員が主導しています。
 電気電子工学科と電子情報工学科は対象領域が重なり合っているため、当初履修できる科目のほとんどは共通です。専門分野で見ると「システム・エレクトロニクス」「ナノ物理・光量子・バイオ」「エネルギー・環境・宇宙」といった広範囲な先端技術からテーマを選べます。特に新しいカリキュラムでは、最先端研究に接しながら、次世代技術を切り開く知識、時代の変化に適応できる応用力を学べるのが特徴です。
 こうした学びの結果、先端テクノロジーを開発する世界のリーダーを育てるために「目に見えない電子、情報の世界をデザインし、制御する」「広範囲な知識を統合し、これまでにないアイデアを創る」「興味ある分野、得意分野を見つけてとことん伸ばす」というキーワードに沿った学びの機会をたくさん設けています。

「研究室では学生がトランジスタをつくる全工程を手掛けます」と語る高木信一教授

情報社会に欠かせない
超省電力トランジスタに挑む

電気電子工学科の各研究室では、学問としての基礎を押さえながら、最先端の製品に直接関わる研究を行っている。高木・竹中研究室はLSIの性能向上を実現する半導体デバイスが研究テーマ。量子効果を利用したトンネルMOSFETなどの次世代トランジスタを開発している。半導体は国際的な競争が激しいが、だからこそ新しいものを世に送り出す好機といえる。

[高木・竹中研究室] 高木信一教授

LSIの性能向上に欠かせない半導体デバイスについて研究しています。Si基板上にGeやIII-V族半導体、グラフェンなどの異種半導体を集積化するなど、従来にない手法に挑戦することで省電力LSIや光配線LSIを実現するのが目標です。

http://www.mosfet.k.u-tokyo.ac.jp/

 パソコンやスマートフォンのような情報通信機器はもちろんのこと、自動車、建築物、家電製品に至るまで、あらゆるところに半導体が使われている。今後は加速度的にIoT(モノのインターネット)が進展するといわれるが、はたして半導体はどこまで発展できるだろうか。

研究室にはトランジスタを製作する機器が備えられている

30年以上研究してもなお新たな発見がある面白さ

 インテルの共同創業者、ゴードン・ムーア氏は50年以上前に「半導体の集積度は18カ月で2倍になることを繰り返す」と予測した。ムーアの法則だ。これまでは法則通り、半導体素子(トランジスタ)は微細化することで指数関数的に進化してきたが、現在は物理的限界が見え始めている。つまり、半導体を発展させるには従来とは異なる観点が必要なのだ。
 学生時代からこの分野の研究に取り組んできた高木信一教授は現状をこう説明する。
 「情報社会で最も基礎的なハードウェアである大規模集積回路(LSI)は多くの場面で使われ、IoTの新たなアイデアもたくさんある一方で、電力消費量が大きな課題になっています。トランジスタが高機能化し、省電力で動くことができれば、今までにない製品にも活用され、社会を大きく変えられるかもしれません。これまでトランジスタは主に微細化で発展してきましたが、材料や構造、回路設計に至るまで、あらゆる側面から高機能化に向けた研究を重ねる必要があると考えます」
 高木教授は学生時代から一貫して、MOSトランジスタ(MOSFET)の研究に取り組んできた。博士課程修了後に就職した企業でもMOSFETの研究を継続し、2年間のスタンフォード大学留学を経て、2003年から自身が育った研究室を受け継ぐに至る。
 「30年以上研究してきた経験を生かせる半面、今なお分からないことがあるところが面白いんです。トランジスタは電圧を制御することでオン・オフを切り替えます。MOSFETの場合は金属と半導体と絶縁膜という異なる材料が触れ合う界面で電子が動くことで機能を発揮します。材料を変えれば、界面の挙動も変わりますから、界面はMOSFETの心臓部なのです」

製作中のトランジスタ
ムーアの法則を超えるトンネルFET

トンネル効果を利用したMOSFETを開発研究

 MOSFETはオン・オフの切り替えに一定以上の電圧を必要として省電力化を阻んでいたが、近年は量子効果によるトンネルMOSFETが期待されている。トンネルMOSFETは、電子が古典的には越えられなかったエネルギー障壁を量子効果で乗り越える際のトンネル電流を利用して低電圧化を図れるのだ。
 高木教授は高いトンネル効果を得られる材料として、シリコン(Si)に応力を加えたひずみSiと、ゲルマニウム(Ge)の組み合わせに着目。2014年にはオン・オフの電流比の世界最高値を出す新型トランジスタの開発に成功した。また、インジウム、ガリウム、ヒ素などのⅢーV族半導体が大きな電子移動度とトンネル確率を持つことから、次世代高性能MOSFETの材料として注目している。

Geを用いたMOSトランジスタの界面構造の電子顕微鏡写真
電気電子工学科にはクリーンルームが設置されている

理論や計算だけでなく手を動かしながら考える

 半導体の研究は適した材料を見つければよいものではない。理論上、最適な材料だとしても、物性によって集積加工が難しく、界面をコントロールできずに完成しないこともある。一方で、期待する結果が出なくても、配合や組み合わせる材料を変えて、うまくいくこともある。高木教授は、理論だけでなく、実際に手を動かしてトランジスタをつくり、実験で検証することを重視する。
 「トランジスタからLSI、ハードウェア、ソフトウェア、システムまではつながっており、電気電子工学はそのすべてをカバーする学問なのです。しかし現実には専門分野に分かれ、半導体だけでも、構造設計、シミュレーション、製造工程、評価などに細分化されています。しかし自分の担当分野しか見ていないと、新しい発想は生まれにくい。そこで研究室では、トランジスタをつくり上げるまで、1人で全工程を手掛けられるように指導しています」
 学生は研究テーマに対して、どのような材料が考えられ、どういった構造が適し、どういった製造工程が考えられるのか、様々な角度から検討を重ねていく。方向性が定まったら試作し、性能を評価する。1つの製造工程に数時間を要することもあり、失敗すれば何度でも繰り返す。構想開始から評価まで数週間から1カ月間を費やしても、思い通りの結果が出ないこともある。
 「研究ですから、たいていはうまくいきません。大切なのはダメだったときに、なぜダメなのか、どのプロセスに課題があったのかを考えること。そこから何が重要かを学び取れるでしょう。この経験は半導体の研究を続ける上でも役立ち、ゼロから自分でつくり上げた経験は他の分野に進んでも生きてくるはずです」

社会で求められるのは課題を発見し解決する力

 電気電子工学科は扱う領域が広範だが、「学部時代は全体を学んでほしい」と高木教授は言う。
 「さらに修士課程に進んだら、学部で学んだ幅広い基礎知識をベースに、自分なりの考えを持って研究を進めてほしい。そして、博士課程に進む学生が増えたらうれしいです。工学では自ら課題を発見し、解決することが大切で、その経験を積むには修士課程2年間では短いんです。私自身、企業と大学の両方を経験してきましたから、博士号を持つ人材が活躍する社会を願っています」
 日本の半導体産業は今厳しい局面に置かれている。しかし、トランジスタの高機能化は世界共通の課題だ。「優れたアイデアを提案できれば、それが世界標準になる可能性がある」と高木教授は言う。情報社会に新たな価値を提供するトランジスタが生まれることを期待したい。

高口さん写真

製品に近い領域でのものづくりを志向
うまくいかず試行錯誤も良い経験に

大学院工学系研究科 電気系工学専攻 修士課程1年
高木・竹中研究室 高口遼太郎さん

進学振り分けでは迷わずに決められましたか?

ものづくりに関心がありましたので、実験を重視する工学部が私に向いていると思いました。研究室を選択するときも同様で、シミュレーション系ではなく、実験をメーンにしているところを選びました。高木・竹中研究室には、実際に半導体素子(トランジスタ)を製造するための装置や設備が整っています。様々な機器類を使って実験するのは、やはり大学の研究室だからこそ経験できることだと思います。

現在の研究テーマについて教えてください。

ゲルマニウム(Ge)を使ったトンネル効果トランジスタを研究しています。Geはシリコンよりもトンネル効果が大きいのですが、電流が流れ過ぎて信号の切り替えがうまくいかないという課題があります。理論的にはGe層を薄く加工すれば切り替えがうまくいくと考えられるので、ぜひ挑戦したいと思っています。
半導体は電子を多く持つリンやヒ素などの不純物を加えるn型と、電子が少ないホウ素などを加えるp型からなります。両者の差を急峻(きゅうしゅん)にすることが重要です。このうちn型の不純物が高濃度になると必要以上に広がりますから、目指す物性を実現する特異な広がり方を見つけたいと思っています。

研究で行き詰まったらどう乗り越えますか。

ひたすら手を動かして実験を重ね、研究室の先輩にも相談します。いろいろな手法を試した結果、期待していた成果が出たときはうれしかったですね。高木・竹中研究室は、学生の自主性を重んじ、自由に研究をさせてくれます。先生からも「どこがダメだったのかを考えて、解決方法を探すことが大切」だと言われています。研究室での経験を通して、自分で実践する力、自分で課題を見つける力は少しずつ身についてきたかなと思っています。

将来の夢を教えてください。

修士課程を修了したら、半導体関連の企業に就職したいと思っています。大学での研究にやりがいを感じていますが、企業では製品に近い研究や開発ができますし、自分が手掛けた製品が社会の役に立っていることがすぐ見えます。そこに魅力を感じています。自分にしかできない製品がいろいろな場面で使われたらうれしいです。

新しいトランジスタの製作は試行錯誤。期待していた成果が出せると喜びは大きい
2017年10月、研究室のメンバーと研究員の家族とともに栃木県・日光へ旅行に
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