航空宇宙工学科 Department of Aeronautics and Astronautics

“天空への夢”を実現する
航空機・エンジン・人工衛星の研究

航空宇宙工学科では、3年生の前半までは幅広く学び、後半からは2つのコースに分かれます。
空気力学、構造力学、航空機力学および制御に関して学ぶ「航空宇宙システム学コース」と航空機用のエンジンや宇宙機の打ち上げから惑星間航行に必要な推進装置などを学ぶ「航空宇宙推進学コース」です。春休みには航空宇宙メーカーや宇宙センター(種子島)、内之浦ロケット打ち上げ場への見学があります。こうした学びは、4年生の卒業設計時に航空機・エンジン・人工衛星を選ぶためのきっかけであり、近い将来に、技術者もしくは研究者へと巣立つための基礎教育となっています。天空への夢を持った学生を歓迎します。

システム統合化能力を発展させる教育

コースの説明の図
 

履修内容は大きく4つの専門分野に分けられる。最終的には、専門分野をまたいで総合する形で、航空機・宇宙機・人工衛星・推進機といった先端的ハードウェアを意識し創造する力が身につく。つまり、システム統合化能力を発展させるための学びができる。

修士課程修了後の進路

修士課程を修了後に、JAXA(宇宙航空研究開発機構)などの官公庁、三菱重工業や全日本空輪といった民間企業への就職が多い。そのうち、航空宇宙関係の業務に就く人は全体の約20~30%を占めている。この他、自動車や電機系、情報系といった他分野に進んだ卒業生がいる。最先端の研究に触れる機会が多く、企業ニーズが高い専攻と見られている。
※グラフは平成27年度の航空宇宙工学専攻・修士課程修了者の進路

修理過程修了後の進路のグラフ

主な就職先:JAXA(宇宙航空研究開発機構)、三菱重工業、トヨタ自動車、IHI、日産自動車、経済産業省、全日本空輸、三菱電機、特許庁ほか

3年生の時間割例「S1S2」
※破線の上がS1、下がS2

時間割の図

航空宇宙工学科のカリキュラムの特色は、航空機、宇宙機、宇宙往還機、推進装置をはじめとする先端ハードウェアやデバイスのイメージを学部から大学院へと一貫して学ぶことができること。航空機や自動車の設計者、飛行制御機器技術者、宇宙飛行士まで、様々な分野に優秀な人材を輩出している。

航空宇宙工学での学びは未開拓技術の宝庫

 重力に逆らって飛ぶ飛行機や宇宙機には無駄のない極限的な設計が求められています。そこには、流体、構造・材料、飛行・制御、推進など、様々な工学分野の知識と経験が凝縮され、しかもバランスの取れた“統合”が要求されます。
 航空宇宙工学領域は、技術の展開速度が早く、技術集約の度合いが高いのが大きな特徴です。
 3年生から選択できる2つのコース「航空宇宙システム学コース」「航空宇宙推進学コース」について、その履修内容は大きく4つの専門分野に分けられます。
 「空気力学系科目」は、航空機やロケット周りの流れを解明し、より良い機体形状は何かを追求します。「制御・システム系科目」は、機体を支配する力学、制御の基礎理論から最適制御およびその応用、宇宙機の軌道計画や機器システムなどを学びます。「構造・材料系科目」は航空機や宇宙機、およびそのエンジンなどについて構造設計に必要なことを力学的な基礎から実用理論までを学びます。「推進系科目」は、各種エンジンに関わる工学的な問題解決に欠かせない基礎および応用学理を習得します。
 こうした総合的なカリキュラムの成果として卒業生たちの活躍が挙げられます。航空機ばかりでなく自動車のボディやエンジン設計者、また飛行制御機器技術者からそれを操作する宇宙飛行士まで、様々な分野に優秀な人材を輩出しています。

日本でも有数の巨大な真空チャンバー。宇宙は真空のため、この中でホールスラスタに関する各種実験を行っている

誰でも宇宙旅行を楽しめて、
長期滞在できる時代を目指す

未開拓技術の宝庫であり、産業としても大きな発展の可能性を持つ航空宇宙工学。
航空宇宙工学科では「航空宇宙システム学コース」と「航空宇宙推進学コース」に分かれて勉強している。
後者を代表する研究室の小紫・小泉研究室では、マイクロ波ロケットやワイヤレスエネルギー伝送などロケットと人工衛星に関する次世代の推進機を研究している。

[小紫・小泉研究室] 小紫公也教授

人類の宇宙進出には宇宙輸送システムの技術革新が不可欠です。マイクロ波ロケットや人工衛星の電気推進など、既存の化学ロケットの限界を超えるようなロケットや人工衛星の推進系の最先端研究を行っています。

http://www.al.t.u-tokyo.ac.jp/

 「私が高校生だった1981年に、NASA(米国航空宇宙局)が初めてスペースシャトルを打ち上げました。これからは人類がより簡単に宇宙に行ける時代になると思い、強い衝撃を受けたのを今でもよく覚えています。スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』の世界がいよいよ現実になるとワクワクしました。ところが、未だにそのような時代は訪れていません。それは、ロケットや人工衛星の推進機に性能の限界があるからです。私が長年にわたり、ロケットや人工衛星の革新的な推進機の研究開発に取り組んできたのは、高校時代に描いた夢を1日も早く実現させたいからなのです」。小紫公也教授は研究にかける熱い思いをこう語る。

革新的な推進機の研究を行っている小紫公也教授

ロケットも燃料から電気に移行する時代に

 誰でも気軽に宇宙旅行を楽しみ、宇宙に長期滞在できるようになるには、宇宙推進システムに技術革新が必要だ。現在、ロケットの推進には、燃料(化学エネルギー)が使われている。その重量はロケット全体の重量の90%以上にも及び、これでは、燃料を使って燃料を輸送しているようなもの。したがって、宇宙に物資を輸送しようと思っても、1回のロケット発射で送ることができる物資はごくわずかだ。宇宙にホテルのような滞在施設を建設しようと思うと、莫大な費用と時間が必要となってしまう。そこで、小紫教授が取り組んでいるのが、ロケットの推進力を化学エネルギーから電気エネルギーに替える研究だ。
 「30年以上にわたる研究がようやく実を結び、自動車がガソリン車から電気自動車に移行するように、今まさに化学ロケットから電気ロケットへと移行しつつあります。電気ロケットに替わることで燃費は一気に1桁も向上しますので、今後、宇宙がより身近なものとなっていくはずです」と小紫教授は語る。
 これまで電気エネルギーの推進力は、化学エネルギーの推進力に比べて弱かったため、人工衛星の位置の制御などに用途が限られていた。しかし、推進力の大幅な向上により、大きな推進力を必要とする軌道上昇や惑星間輸送にも使われる時代が訪れようとしている。
 主流となる電気推進機は、「ホールスラスタ」と呼ばれるもので、大きな推進力を持つホールスラスタの研究開発に日本で先駆けて着手したのが小紫教授である。そのため、小紫・小泉研究室には、国内外からホールスラスタについて研究したいという学生が数多くやってくる。
 「現在は、25キロワットという大出力のホールスラスタを日本の大学がオールジャパン体制で開発中で、実用化は目前です。一方、欧米でも実用化に向けた開発が急ピッチで進められています。大出力に加え、長寿命や安定性、低コストが求められる厳しい世界ですので、日欧米のうち、どの国のメーカーが勝ち残るかは分かりませんが、約30 年前には夢物語、SFの世界と思われていたことが現実になるというのは、実に感慨深いものですね」
 小紫教授は、さらに数十年先にも目を向けている。マイクロ波ロケットやレーザーロケット、ワイヤレスエネルギー伝送・変換システムの研究である。「ちょうどホールスラスタの研究を始めた頃と同じで、現在のところ、周囲からはSFの世界だと思われています。しかし、夢のある楽しみな研究テーマですので、ぜひとも実現させたいですね」と小紫教授。


数十年先の実用化を見据えたマイクロ波ロケットやレーザーロケットの研究も

ロケットの推進力を地上からワイヤレスで伝送

 マイクロ波ロケット、レーザーロケットとは、その名の通り、マイクロ波やレーザーを使って推進するロケットのことだ。現在、マイクロ波ロケットに関しては、500キロワットのビームで、30ニュートンの推進力を実現しており、将来的には、例えば総重量約2万トンの太陽発電衛星の打ち上げを担うことを目指している。
 そして、マイクロ波ロケット、レーザーロケットの中核となる技術の一つが、ワイヤレスエネルギー伝送・変換システムである。これは、地上からロケットに向かって、マイクロ波やレーザー光を発信し、ワイヤレスでエネルギーを供給しようというものだ。実現できれば、ロケットには推進用のエネルギーを一切搭載する必要がなくなるため、より多くの物資や人をロケットに載せることができるようになる。
 「これが実現すれば、スペースコロニーなど大型宇宙構造物を建設する際に必要となる物資の輸送コストが劇的に減ります。また、宇宙旅行も燃料を心配することなく、より遠くまで行くことができるようになるでしょう」と小紫教授。
 さらに、ワイヤレスエネルギー伝送・変換システムは、ロケットの推進だけでなく、電気自動車や体内に入り込んで患部を治療するマイクロロボットへのワイヤレス給電にも応用可能。実社会への波及効果も大きいという。

ホールスラスタ作動の様子

学生にはパイオニア精神で夢に向かって挑戦してほしい

 そもそも小紫教授が航空宇宙工学の道を選んだ理由は、スペースシャトルに衝撃を受けたということもあったが、「最先端の研究をやっている」という印象が強かったからだという。
 「大学に入学したばかりの頃、これから40年間、研究者人生を歩み続けるとした場合、常に色褪せない最先端の研究テーマを選びたいと強く思いました。それが、航空宇宙工学だったのです」と小紫教授は振り返る。
 現在、学部では、ロケットの推進に関する講義を担当している小紫教授。そこでは、既存の化学ロケットについて、最高性能を引き出す液体燃料の混合比や人工衛星の推進機に関する設計方法などを教えている。しかし、化学推進には限界があり、既存のロケット技術の延長では、『2001年宇宙の旅』のような世界を手に入れることができないのは既述の通りだ。
 「学生の皆さんには、たとえSFの世界の話だと言われようとも、パイオニア精神を持って、自分がイノベーションを起こすぞという意気込みで、研究に取り組んでほしいと願っています。特に、大学院は学部とは違って自由に研究を楽しむことができる場。ぜひ広い視野で世界を相手に、夢の実現に向けチャレンジしてほしいですね」と小紫教授は語る。

田中さん写真

レーザーを使ったアルミナ還元で
月面長期滞在を可能にする

大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修士課程1年
小紫・小泉研究室 田中聖也さん

航空宇宙工学科を選んだ理由を教えてください。

ロケットや人工衛星のニュースを熱心に見る子どもで、星空を眺めるのも好きでした。宇宙関連の勉強がしたいと思ったのは高校生の時。進路指導の先生から航空宇宙工学科を勧められました。小紫・小泉研究室を選んだのは、人工衛星の推進機について研究したいと思ったから。学部時代はロケットエンジンの設計に取り組み、宇宙に行くまでを学んだので、修士では、宇宙に行ってからのこと、つまり人工衛星について研究しようと思いました。

現在の研究内容について詳しく解説してください。

酸化アルミニウムを、レーザーを使って還元する研究をしています。これは、宇宙に長期滞在するための手段の一つなのです。JAXA(宇宙航空研究開発機構)では、月面に基地をつくる計画を進めていますが、人類が月に長期滞在するためには酸素が必要で、それを地球から月に運ぶのは大変です。そこで、月に豊富にある酸化アルミニウムを、レーザーを使って酸素とアルミニウムに分解し、酸素は我々の呼吸に、アルミニウムはロケットや人工衛星を推進するための燃料に使おうと考えました。燃焼によって生成された酸化アルミニウムは、再度レーザーで還元すれば、エネルギーの備蓄として、半永久的に利用できます。これを、アルミニウム・エネルギーサイクルといい、そのための基礎研究を進めています。

研究の面白みや醍醐味を感じるのはどんな時ですか。

宇宙資源利用技術の開発という新たな分野を自分の手で切り拓いているという強い手応えを感じています。一見、ロケットや人工衛星とは無関係のように思えますが、実際に我々が宇宙に行き、長期滞在するためには、宇宙の資源を有効活用しなければなりません。そのための重要な研究の一つとして、大きなやりがいがあります。

大学院や研究室の生活について教えてください。

院生31人、学部生7人が在籍する和気あいあいとした雰囲気の良い研究室です。週1回のゼミの発表会では、お互いの研究テーマについて活発な意見が飛び交います。小紫先生はもとより、先輩や同期からアドバイスをいただけるので、研究に行き詰って1人で悩むということはありません。とても充実しています。

柏キャンパスの研究室にある集光レンズと真空チャンバー
研究室旅行は大人数でワイワイガヤガヤ
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