建築学科 Department of Architecture

家具、住宅、都市など
人が活動するあらゆる環境を構想する

建築は日本の誇るべき「ものづくり」の一つです。
その学術領域は実に広く、総合的であり、社会との関わり合いも密接です。
例えば、何百年も使い続けられる古建築、高度な災害対策技術、コミュニティ、建具なども含まれます。
歴史や文化を残しながら社会に新しい活力を生み出す「場所」を提供することも重要な役目です。
建築学科では、人間と空間について様々な現象について多角的な教育が受けられます。
世界中の「もの」だけでなく、「ひと」を工学的に扱うことも大きな特徴です。

建築学科で磨く資質

コースの説明の図
 

建築空間は世界中のあらゆる人間活動を支えている。そういう視点に立ったとき、世界規模で拡大する環境問題や都市問題に関わるには専門知識だけでなく、グローバルな視野と柔軟な思考力が欠かせない。

修士課程修了後の進路

建築設計事務所・ゼネコンのほか、不動産・デベロッパー・銀行といった建設業を支える仕事、業務の発注や監督をする官公庁・国際機関、地域に密着したまちづくりコンサルタントやNPO、改修・保存分野、グラフィック分野に進む人も増えている。

修理過程修了後の進路のグラフ

主な就職先:日建設計、日本設計、鹿島建設、大林組、竹中工務店、清水建設、大成建設、国土交通省、JR東日本ほか

3年生の時間割例「S1S2」
※破線の上がS1、下がS2

時間割の図

建築学科のカリキュラムは、学術体系から選び抜かれたエッセンスを理解するための講義群とこれらを体得するする演習群から構成されている。この他、Aという演習でつくったものをBという演習で破壊試験するような関係性があり、分野をまたいでジョイントする指導体制となっている。

個人の知的興味に応じて建築・人を研究していく

 東京大学建築学科は日本に最初にできた建築学科です。その起源は明治6年にさかのぼります。著名な卒業生・修了生も多く、辰野金吾、丹下健三、黒川紀章、槇文彦、磯崎新、伊東豊雄をはじめ、近年においても世界のトップレベルで活躍する建築家や建築技術者、デザイナーを輩出しています。
 建築学は、家具や住宅から都市まで、人が活動するあらゆる環境を構想する学問です。様々な「もの」だけでなく、「ひと」も工学的に扱うのが建築学科の特徴です。
 その学問領域は3つ用意されており、専門家としての歴史観を育成しつつ、先端の計画デザインを行う「計画・歴史・意匠系」、現在最も注目される環境問題に取り組む「設備・環境系」、地震先進国である強みを活かした先端のエンジニアリングとしての「構造・材料・構法系」があります。カリキュラム上では、2、3年でこれらの領域について基礎力を磨きます。
 学術体系を理解しエッセンスを習得する「講義群」と体得するための「演習群」の2つから構成されています。
 4年からは各分野の専門性を深めるようになっており、幅広い総合力と高度な専門性を統合して建築を思考することのできる人物の育成を行っています。建築学科ではこうした学びの中にも柔軟な選択性があり、建築設計の基礎である設計製図第一、卒業論文、卒業制作以外はすべて選択科目となっています。

「日本盲導犬総合センター」(静岡県富士宮市/2008年竣工)は日本で唯一の常時見学可能な盲導犬訓練施設として千葉学建築計画事務所が建築

都市空間や社会とのつながりから
未来を見据えた建築の姿を考える

近年の建築は建物を建てるだけでなく、コミュニティーや都市の活性化、災害対策、地球環境など様々なテーマが関わってくる。
千葉学教授の研究室では、人々が暮らす都市空間やコミュニティーとのつながりから建築の在り方を捉え直し、「人が集まる場」をどのようにつくるかをテーマとして、未来を見据えた新しい建築モデルを日々追究している。
有名な建築に「日本盲導犬総合センター」(静岡県富士宮市/2008年竣工)などがある。

[千葉研究室]千葉学教授

建築の実務家である千葉学教授のもと、建築を都市空間とのつながりの中で捉え、
新たな設計論の構築とそれに基づく実践的な設計プロジェクトの可能性を探る研究を行っています。
特徴は、都市のような大きなスケールから建具のような小さなものなど、様々な視点から都市を分析しつつ、具体的な建築プロジェクトへと反映させていることです。

http://chiba-lab.arch.t.u-tokyo.ac.jp/

人が集まる場をどうつくるかがテーマ

 建築家としても活躍し、日本建築学会賞作品賞など数々の受賞歴を持つ千葉学教授の研究室では、建築とデザインに関して理論的かつ実践的な研究を行っている。研究テーマの中心は、建築を都市空間とのつながりの中で捉えることだ。
 背景にあるのは、戦後復興から半世紀以上の時間が経過し、現在は建物をただ建てればいいという時代ではなくなったこと。千葉教授よると、人口減少に伴う空き家の増加が問題となり、既存の建物をスクラップ・アンド・ビルドするのが容易ではない中、建築やデザインの役割を改めて考え直すことが必要だという。
 千葉研究室では、人間や暮らしといった小さなスケールから都市という大きなスケールまで、幅広いスケールからの視点を持って領域横断的に建築を捉える様々な試みを行っている。
 「重視しているのは『人はどう集まるか』です。人の集まり方は都市や地域、コミュニティー、あるいはもっと小さな単位に至るまで、場面によって異なります。ただ、どのような場面においても建築は大きく関わってきます。建造物の大小、時には建築と呼べないような仕組みでもいいのですが、いずれにしても人が集まる場をどうつくるかが、私たちの研究の根本的なテーマだと考えています」
 社会は人が集まることで形成され、人と社会は建造物や建築によってつながっているとも捉えられる。

日本盲導犬総合センター
“富士ハーネス”という愛称で知られる日本盲導犬総合センターは、様々な機能を持った部屋それぞれが独立しながらもつながることができる空間配置となっている

幅広いスケールを横断し時代や場所に即した建築を

 千葉研究室が取り組む研究テーマは、大きく2つに分けられる。
 一つは建物の入口や窓などが外と接する部分である「境界面」だ。
 昔の日本建築の境界面には現代の建築には見られなくなった様々な建具(戸や窓など)があった。例えば格子戸なら、その格子の隙間から通りを見ることで、人と街の間には穏やかに調和した豊かな関係が育まれてきた。それが高度経済成長期を経て状況が変わった。かつてのような街と調和していた境界面は失われてしまったという。
 建物の境界面は時代や社会と密接に結びついており、見方を変えると、その時代に即した境界面の在り方が建具一つからでも浮かび上がってくる。となれば、現代においても時代に即した境界面があるはずで、それを追究している。
 もう一つは、個々の建築に限定せず、もっと大きなスケールにおいて、都市を今後活性化していくための居住環境や生活環境とはどんなものかを研究することだ。
 日本は高齢化社会を迎え、人口も減っていくが、その社会で人はどのように暮らし、どのように集まるかを考え、そこに建築がどう関わっていけるかを探究している。

1960年東京生まれの自転車好き。建築家の仕事に欠かせないのは、その地域や人の持つ唯一の魅力を読み取る力だと話す
千葉学建築計画事務所のHP
千葉学建築計画事務所のHP

巨大廃墟に衝撃を受け新時代の建築モデルを描く

 かつて千葉教授は米国の地方都市を訪れた際、3棟の超高層ビルが空き家状態になっているのを目撃した。
 「あれほど大規模な建物が完全な空き家になると、シャッター商店街どころの騒ぎではなく、恐ろしい廃墟でした。とはいえ一度建ててしまった巨大建築は、壊そうにも莫大なエネルギーが必要になります。これは対岸の出来事ではなく、大規模な開発を繰り返す現在の日本においても起こり得ることです。本当にそれでいいのか、建築や街の開発は長い時間軸で捉え、未来像の中に位置づけて考えなければいけないのではないか。そのとき、20世紀の建築に代わる新しい建築の姿を描いてみたいという素朴な思いが生まれました」
 そうした未来像を描くためにも、研究室では何か一つに絞ったテーマに取り組むのではなく、幅広い視野を持って建築に向き合うような指導を学生に行っているという。
 「実際に建物や街という空間をつくる建築は実学です。ですが、どのような建築にも背後には経済の仕組みや様々な社会現象が絡んでいますし、もちろん環境や自然が反映されています。その意味で、建築は実社会から離れることのできない、まさに実学そのものなのです。ですから建築を学ぶと、社会を新しい観点から見ることができるようになります。そこが一番の面白さですね」

工学院大学の創立125周年記念総合教育棟
千葉学建築計画事務所が設計した工学院大学の創立125周年記念総合教育棟(2012年夏竣工)。免震層を利用したアースピットによる地熱利用など、環境への配慮や省エネルギー設備などを採用しているのが特徴だ

建築する人、生み出す人を研究室で育てていく

 「教育とは場づくりだ」と千葉教授は話す。自らの知識を学生に授けることが教育なのではなく、様々な個性を持った学生たちが集まり、それぞれの視点で興味を持ってテーマに関わっていくための場を用意することが教育だと考えている。
 研究室では、建物や街並みを設計したり、設計に基づいてモデルを工作したりといった実務的な作業もあるが、一人ひとりの個性を大事にしつつ、議論を深めていく場という部分を重視している。ここで育った学生たちには、できることなら建築という仕事に携わってほしいと千葉教授は願っている。
 千葉教授は、この研究室で繰り広げられる学生たちとの議論は充実した時間だと語る。実務家という立場では得られない瞬間であり、彼らの斬新なアイデアに触れられる貴重な場だと表情を和らげる。
 「今はドンドンつくる時代ではないと言いましたが、太古の昔から人は建物をつくってきましたし、今後も文明がある限り建築は続いていくでしょう。物理的な空間は、人間の生活や人と人との関係に直接影響を与えるものです。つまり、建築はどこか人間の本能に近いところがあるのだと思います。時代に応じて変わっていく要素を取り入れながら、未来を見据え、いい建築を今後もつくり出していってほしいと思います」

坂本さん写真

社会のニーズと技術がマッチングした
新しいタイプの境界面を追究しています

大学院工学系研究科 建築学専攻 修士課程2年
千葉研究室 坂本陽太郎さん

建築学科、千葉研究室を選んだ理由とは?

大学選びの段階で、建築を学ぼうと考えていました。といっても高校の頃は建築家に興味があったわけではなく、どちらかというと建造物のほうで、美術志向でした。建築は文系と理系の間にあり、美術にもつながる部分があるので、建築学科に決めました。千葉先生の研究室に興味を持ったのは、都市のような大きなスケールから建具のような小さなもの、さらにはナノレベルの材料までを幅広く研究対象としているからです。スケールを横断して行ったり来たりしつつ、建築と社会のつながりを考えられるのが、この研究室の大きな魅力だと思います。

どのようなプロジェクトに携わっていますか?

千葉研究室では2015年から大日本印刷「すまいみらい研究所」との共同研究を行っています。私は、そこで住まいの境界面にまつわる建具の研究に携わっています。最初は日本の伝統的な建具をはじめとして世界中の建具をリサーチし、事例を収集するところから着手しました。夏と冬で環境が大きく変化する地域は建具が発達しているだろうということで、実際に北陸で調査も行いました。また、建具の素材も大きなテーマです。現在は新しい素材がドンドン開発されています。例えば競泳水着に使われるような新しい素材などもリサーチし、素材研究をベースに新しい建具の提案も行っています。

研究のどういう部分に面白さを感じていますか?

社会のニーズと素材や技術をマッチングさせ、内と外の新しい境界面をどうつくっていくかを考えるところに面白さを感じています。現在は人口が減り始め、空き家が増えています。それに伴い家族の在り方も変わってきている状況です。一方で建物は一度つくると建て替えはなかなか難しいものです。しかし境界面の建具であれば建物全体を更新しなくても取り替えられるので、変わり続けるこれからの社会において重要性が増すと考えています。

どんな将来像を描いていますか?

将来は大学や研究機関ではなく、設計の仕事に進みたいと考えています。研究室で建築と都市や社会とのつながりの中から建具や素材を知り、実務的な設計部分についても学ぶことで、自分の将来のベースにできればと思います。

共同研究の成果物。日本の伝統的な建具をはじめ世界中の建具をリサーチした
岡山県で開催された現代アートの国際展(2016年秋)では屋台の設計に参加した
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