UTokyo Engineering Princesses UTokyo Engineering Princesses
岩瀬陽子さん

 東京大学には文科三類で入学し、進学振分けで工学部に転じました。中学生の頃から歴史や古文が好きで、高校2年で物理と化学から離れた私にとっては大きな決断でしたが、その一歩を踏み出せたのは工学部の先生方との出会いがあったからです。
 きっかけは学部前期課程で所属していた国際政治経済系のゼミでした。内容は毎週、英国エコノミスト誌からテーマを取り上げて議論するというもの。事前リサーチは大変でしたが、そのおかげで資源やエネルギー問題、環境対策などに視野が広がりました。
 また、主題課目では千葉の天然ガスプラントを見学することができ、現場を訪ねる大切さを学びました。社会課題の解決には政治や経済や法律など文系的アプローチを採りますが、課題の理解には理系的アプローチが必要です。文理融合の機運が高まっていた時期でもあり、理系に転じました。
 とはいえ、数ⅢC、流体力学や材料力学などの勉強は大変でした。同期の友人に助けられましたし、どの先生方も丁寧に指導してくださったのがありがたかったです。
 今思えば、理系に転ずる不安や大変さよりも、現場に行けるというモチベーションのほうが大きかったかもしれません。特に、日本の最北端にある深地層研究センターで地下350mまで潜って最先端の研究を見学できたこと、中東アブダビの広大な太陽熱発電プラントや国際再生可能エネルギー機関を視察できたことは印象に残っています。
 引き続き大学院で研究することも考えましたが、1日も早く社会に出たいという思いも強く、総合商社への就職を決めました。就職活動ではたくさんのOB・OGにお話を伺いました。その中でも、会社として社会的責任を果たしたいと将来の夢を語る方が多かった企業を選びました。
 東京大学にはユニークなプログラムがたくさん用意されています。また、先生方に相談することでより多くの機会を得ることができます。例えば、私は研究室の先生にお願いして、実際に中国最高峰の清華大学に1カ月間、研究室から派遣してもらうことができました。自分から積極的に行動すれば、他にない経験ができますから、どんどん挑戦していってほしいと思います。

フィールドワークの一環としてアラブ首長国連邦の一つ、ドバイ首長国に10日間行ってきました。現地大学との交流、経済計画の担当官との対話、太陽光発電プラントの見学、石油関連企業の訪問など、もりだくさんの内容でした。日本とドバイでは価値観も言語も違いますが、お互いの国がこれからどういう交流を図り理解を深めていくべきか、どうしたらお互いにWin-Winになれるイノベーションを起こして発展していけるかなどを議論しました。

山添有紗さん

 中学3年生の時に小型の火薬エンジンを使用したモデルロケットの教育プログラムに参加し、その面白さから宇宙が大好きになりました。高校卒業後は地元に近い九州大学に進むつもりでしたが、先生から「宇宙を学ぶなら東京大学のほうがよいのでは」と勧められて、東大に入りました。
 進学選択では航空宇宙工学科とマテリアル工学科で迷いました。ロケットを飛ばすには本体の構造や素材も重要で、その観点から研究するのもいいかなと思ったのです。でも、まずは一番好きな分野を第 一志望にしようと決断。無事に希望通りの学科に進むことができました。
 航空宇宙工学科には1学年60人弱の学生がいますが、私の代は女性は私だけ。1つ上の代は4人、下の代は5人もいるそうなので、毎年1人だけというわけではないみたいです。最初は不安もありましたが、女の子同士じゃないとできない会話って特にないんですよね。学科の友人は男女関係なく、普通に接してくれますから違和感もありません。
 工学部には面白い人が多く、何気ない会話が楽しいです。日常生活の中で生じた疑問をふと口にすると、それに対して真剣に答えを返してくれたり、議論が始まったり、どんなことでもちゃんと受け止めて、反応が返ってくるところがすごいなと思っています。
 楽しかった講義は宇宙工学演習です。ロケットエンジンのサイクル設計や人工衛星の概念設計などを学び、20枚から30枚ほどのリポートを提出しました。リポートはかなり大変でしたが、非常に勉強になりました。
 文章を書くのは結構好きで、工学部の広報誌「Ttime!」のお手伝いをしているほか、「宇宙広報団体TELSTAR」の副代表を務めています。この団体では宇宙産業活性化のために、中高生に宇宙の魅力を伝えるフリーペーパーを発行しています。インカレ団体で他大学の他学部の学生と交流が持てるので、視野も広がりとても楽しいです。
 まもなく研究室を選択する時期ですが、私が所属する航空宇宙推進学コースには、様々なエンジンについて研究している研究室があるので、どこに行こうか考えているところです。将来的には大学院に進んでしっかり研究をして、ものづくりに関わりたいと思っています。決して手先が器用なほうではないのですが、将来はモデルロケットのように、チームの仲間と目標を達成する喜びを分かち合える仕事に就きたいです。

Sセメスター(4月〜7月)に「飛行ロボットプロジェクト」という授業を履修し、マルチコプターを製作しました。そこで同じ班だったメンバーと9月に飛行ロボットコンテストのマルチコプター部門に出場しました。大会1カ月前までまったく飛ばず、出場も危ぶまれましたが、テストを繰り返しながら構造などを工夫し、安定飛行を実現。2位に入賞することができ、とてもうれしかったです。

森 千夏さん

 学んだことを社会に還元できる“出口に近い学問”を学びたいと思い工学部を選びました。理系科目全般が好きで、生物、化学、物理などの境界領域に興味があり、ギリギリまでどの学科に進むか悩みましたが、進学振分け直前に読んだ『京都大学人気講義/サイエンスの発想法 化学と生物学が融合すればアイデアがどんどん湧いてくる』(祥伝社)という本に影響を受けて、化学生命工学科に進むことを決めました。
 中でも私が所属する津本研究室は、物理化学的な手法を用いて生体分子間相互作用について研究しており、高度で多彩な機能を持つタンパク質のエンジニアリングを学ぶことができるのが魅力でした。
 実際に研究を始めてみると、思うようにデータは取れず、失敗ばかり。落ち込むことも多かったのですが、津本浩平教授はどんなデータでも議論の対象としてくださり、失敗した実験のデータからも学ぶべきものが多くあるということを教えてくださいました。そうやって学部時代にデータの見方や研究に対する向き合い方を学ばせていただき、徐々に自分なりの研究ができるようになってきたのではないかと思います。
 私は学士課程・修士課程と、ラクダ科の動物などが持っている特殊な抗体に関する研究をしています。人間を含む多くの動物の抗体は2本の軽鎖と2本の重鎖から構成されていますが、ラクダ科の動物は2本の重鎖のみからなる「重鎖抗体」というものを持っています。重鎖抗体の可変領域を切り出した分子であるVHH抗体は、低分子量の抗体として生産のしやすさや安定性の高さなどの点で注目を集めており、私はそのVHH抗体を用いて、生体内の情報伝達物質(サイトカイン)のシグナル制御ができないかと考えています。
 津本研究室のスタッフの方々は学生のやりたいことを尊重し、温かくご指導してくださいますし、実験設備も非常に充実しています。このような恵まれた環境で研究ができるのは学生だからこそ。ですので、この環境を思う存分活用して、まだ分からないことの多いVHH抗体の物性研究に取り組んでいるところです。そうして、いつかはこの抗体を使ってがんや自己免疫疾患を治療する薬をつくりたいと思っています。

生きた細胞を使うので、生き物相手ならではの難しさがありますし、手順通りに実験をしても教科書と同じ結果が出ないことも多く苦労しました。でも、細胞が元気に育ってくれるとうれしくて、細胞を見ることは癒しにもなっています。私が研究しているのはアルパカの抗体。研究でお世話になっているアルパカに会いたくて、牧場まで行かせていただいたことも(笑)。本物のアルパカはすごくかわいくて、ますます研究に励まなくてはと気合いが入りました。

中村乃理子さん

 小学生の時に祖母をがんで亡くしたことから医療に興味を持ちました。医学部進学を考えたこともありましたが、10代のうちに将来の職業まで決めてしまうことに抵抗があり、いろいろなことを勉強してから進路を決めたいと思っていたところ、学部2年の時に受講したオムニバス形式の講義で医工連携という学問領域があることを知りました。そこで自分がつくったものが医療の役に立つ勉強ができる化学システム工学科を選択。学部4年で、医療用ハイドロゲルの研究をしました。
 しかし、学部で1年間研究したくらいでは思ったような結果は出せません。では、大学院でしっかりと研究をするなら何がしたいかと考えたとき、思い浮かんだのがドラッグデリバリーシステム(DDS)でした。やはり祖母のような病気の治療に役立つ研究がしたいと思ったのです。
 修士ではバイオエンジニアリング専攻のカブラル研究室に所属し、脳を標的としたDDSの研究をしています。脳は生命維持においても大変重要な部分なので、脳を守るためのバリア機能が備わっています。その機能があるせいで、アルツハイマー病などの良い薬が開発されても、脳の重要な部分にはごくわずかしか薬が到達できないのです。そこで脳の中にまで薬を届けられるようなキャリアをつくる研究をしています。将来的にはニューロンなど、特定のターゲットに届くようにしたいですが、まずは脳のバリアを効率よく超えることが目標です。
 修士課程を修了したら、博士課程に進学します。この研究を2年間で終わらせるのはもったいないと感じ、もう少しがんばってみたくなりました。今の研究は多くの人たちが時間をかけて研究してきたことの中から発展させたテーマですが、博士課程に行くからには誰もやったことのないことに取り組んでみたいと思っています。
 振り返ってみると、学部2年の後期に学んだ工学部の講義が大学院での研究にとても役立ちました。そういった基礎的な知識があるかどうかで、その分野の論文を読んだときの理解がまるで違います。また、バイオエンジニアリング専攻の必修科目の授業はすべて英語ですし、研究室のセミナーなど英語で発表する機会もたくさんあります。大学院に進むのならば、英語力を身につけておくとよいと思います。

基礎研究など他分野の学生と関わりながら勉強できればと思い、工学部、理学部、薬学部、医学部などライフサイエンス系の学生が集まるプログラムGPLLIに参加しています。このプログラムの一環として、2017年9月に英国に行き、英語での議論力を鍛えるというプログラムにも参加。12日間で3回の口頭発表と2回のポスター発表をしてきました。また、医学部の研究室で研究するなど、学内でも異分野融合的な経験をさせてもらっています。

江里口瑛子さん

 現在の研究テーマは機械翻訳モデルの構築です。特に、言語に内在する構文構造情報に着目しています。例えば、「We visited New York.」という英文は「New」「York」の2単語で1つの名詞句を表し、直前に動詞「visited」をとることで動詞句が構成されています。このような文法情報は木構造データとして表現できるので、これを利用して効率的にデータから翻訳ルールを学習する研究に取り組んでいます。機械翻訳技術が精緻化されることで、世の中から言語の壁を取り除くことができます。多様化する社会の中で、迅速かつ円滑なコミュニケーションを可能にする技術として大きな期待が寄せられています。
 博士課程ではニューヨーク大学とカリフォルニアのグーグル本社に、それぞれ3カ月ほど滞在しました。出身地も文化も異なる優秀な人たちとの交流を通して新たな視点を得ることができましたし、多角的な視点で自分自身を謙虚に見つめ直す良い機会になったと思います。技術や専門知識にとどまらない学びのおかげで、世の中には自分の知らないことが山のようにあり、私の可能性や伸びしろはまだ十分にあるのだと気づくことができました。
 今年はいよいよ就職活動ですが、これからも研究活動を続けていきたいと思っています。また、それら研究成果に基づいた実社会の問題を解決するための技術開発にも取り組みたいです。研究分野では日々新たな挑戦がなされ、多くの成果が論文として広く共有されていますが、実社会には未解決の問題が山積しています。課題を探索するとともに、その解決策を模索し、広く社会に役立つ仕事ができればと考えています。
 将来の夢は、コンピューターを利用して多種多様な言葉を理解し、それらの差異を埋める方法を明らかにすること、また、その成果を専門家の間にとどめることなく、誰にでも理解してもらえるように努めることです。コンピューター科学の技術は既に様々な形で社会に浸透しているため、自身の仕事を通して陰に陽に社会貢献を行いたいと考えています。
 工学部の女性の割合はまだ少なく、それゆえの苦労もないわけではありませんが、私が最もつらかったのは自分が何をしたいのかという問いに確固たる答えを持っていなかったときでした。この問いに答えるには継続して学ぶこと、常に挑戦し続けることが大切です。失敗を恐れることなく新しい世界に飛び込んでいってほしいです。

普段はコンピューターでの作業が多く、何時間も同じ姿勢のままでモニターを見続けることもあるため体に負担がかかります。そこでこのままではいけないと一念発起しジョギングなど運動をするようになりました。本郷キャンパスにある御殿下記念館のジム施設に週1、2回の頻度で通っています。また、中学生の頃に習い始めた茶道は日常から少し離れて気持ちを落ち着かせることができる良い方法の一つです。

上野美希子さん 上野美希子さん

 2017年に花王に入社した上野美希子さん。現在所属する香料開発研究所は、化粧品、ヘアケア製品、入浴剤、衣料用洗剤、柔軟剤など花王の全製品の香りを開発する部署だ。上野さんは主に東南アジア諸国(ASEAN)向けの衣料用洗剤の香り開発を担当している。
 香りの開発は、数千種類の香料素材を調合して香りをつくるパフューマー(調香師)と、香りの方向性を決めて評価をするエバリュエーターという2つの専門職が協力し合いながら行う。上野さんはエバリュエーターとして、商品開発の初期段階から関連部署と打ち合わせを重ね、商品像にあった香りを設計する。それを基にパフューマーと一緒に香りを創作する。出来上がった香りは実際に洗濯をして評価を行っている。
 「香りの開発は未経験でしたから、ゼロから嗅覚のトレーニングを始めました。今も毎朝早めに出社して、同期の仲間たちと香りを覚えるトレーニングをしています。入社半年で、目標の135種類は覚えましたが、今後2、3年で400種類くらいの香りを覚えなければいけません。でも、パフューマーは千種類以上の香りを記憶しているので、とてもかないませんね」
 学部時代は再生医療の生体材料として使われるハイドロゲルを、大学院ではDNAを構成する核酸を使った核酸医薬品を研究対象としていた上野さん。修士課程修了後は大学に残って研究を続ける道もあったが、「消費者に近い応用研究をやりたい」と花王に就職した。
 「製薬会社の研究職も考えましたが、できるだけたくさんの商品の開発に携わりたかったのと、自分が開発したものが実際に使われているところを見たかったのです。それに、アカデミアの研究をやりたくなったら、社会人ドクターとして戻ることもできますから」
 研究対象は変わったが、大学時代に身につけたことが役立つことは多いという。「香料は有機化合物なので物性値についての知識は必要ですし、構造式を見ればその香料の特徴が分かります。また、仮説を立て、検証して、その結果を踏まえてまた新しい仮説を立てるという研究の一連の流れは、企業で研究している今も同じです」
 アジアの人たちの香りの好みをリサーチしたり、新しい香料を覚えたり、日々発見があり楽しい毎日。まずはエバリュエーターとして一人前になることが目標だが、将来的には別の研究分野にも関わってみたいと意欲的だ。

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