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ENGINEERING POWER 東京大学工学部ガイド[エンジニアリングパワー] - 東京大学工学部

バイリンガルキャンパス推進センターが行っている「創造的ものづくりプロジェクト」/「創造性工学プロジェクト」は、ものづくりを通して実地の重要性を学び、プロジェクト運営能力の養成を目指す。教養学部向けの全学自由研究・全学体験ゼミナールにも工学部から多様なテーマが提供されている。この中から4つのプロジェクトを紹介しよう。

「チーム・サムライ」を名乗る東大のラリーチームが2013年2月下旬から4月上旬にかけ、ヨーロッパで開催された3つのヒストリックラリーに参戦した。ヒストリックラリーとは、古いクルマを修復・再現して、伝統のあるラリーコースを走るというヨーロッパでは人気のイベント。

「チーム・サムライ」は1970年代の国産車2台をラリーカーに仕立て、スペイン、ベルギー、イタリアでのラリに参戦。転戦の合間には海外大学との交流や工場訪問も実施し、貴重な体験を積んだ。

この海外ヒストリックラリー参戦プロジェクトは、工学部・工学系研究科のバイリンガルキャンパス推進センタが実施している「創造的ものづくりプロジェクト」(学部)、「創造性工学プロジェクト」(大学院)に設定されているテーマのひとつで、正式な履修科目として認められている。

「創造的ものづくりプロジェクト」/「創造性工学プロジェクト」は、バラエティに富んだプロジェクトの中からテマを選び、基礎講義から企画、設計、製作、実験、改良、発表を行うプセスを経験し、課題解決の創造力を養いながらプロジェクトを進めていくことにより、工学リーダーとしての力を身につけることを目的としている。さらには国際化に対応できる人材の育成も大きなテーマとなっており、"ものづくり"には創造的な体験ができる活動や国際経験なども含まれている。

海外ヒストリックラリー参戦プロジェクトを指導する機械工学専攻の草加浩平特任教授は、「プロジェクトの目的は大きく3つ。補給パーツのないクルマを直したり、ラリー車に改造することによるものづくり教育、海外での参戦や工場見学、大学間交流を通しての国際化教育、専門学校とのコラボレーションやスポンサー集めなどの渉外活動を通したコミュニケーション教育です。プロジェクトを終えた学生は、海外での学会発表や留学、海外インターンシップなどに積極的に参加するなど期待以上の成果が上がっています」と言う。

航空システム国際PBLプロジェクトもユニークだ。ボーイング社と連携して航空関係のPBL(問題解決型授業)を行うこのプロジェクトは、ボーイング社の社員から航空産業の概要を直接聞けるほか、最終のグループワークとして未来の航空機をテーマに東大、東北大、名古屋大の3大学でビジネスコンペを実施。さらに番外編としてシアトルにあるエバレット工場の訪問ツアーも行なわれた。

航空宇宙工学専攻の塩野寛明さん(修士1年)は「科学技術を絡めて海外に行く機会がほしかったので参加しました。このプロジェクトに参加するまで宇宙業界を志す気持ちが強かったのですが、参加後は航空業界を視野に入れるようになりました。工場を見たり、社員の方と直接話すことで気持ちが動いたのだとおもいます」と大きな影響を受けた様子。

「参加してみて海外が身近になりました。自分から質問してコミュニケーションを取ることの重要性がわかりました」と言う航空宇宙工学専攻の桑原麻季さん(修士1年)はツアーのみの参加だったが、これをきっかけに留学の準備を進めている。一方、「以前から航空機産業に興味があり、友人の紹介でこの講義を受けました」という建川友宏さん(工学部3年)は、社会基盤学科からの参加。学科を超えて参加できるのも「創造的ものづくりプロジェクト」/「創造性工学プロジェクト」の特徴のひとつだ。

もちろん、実際のものづくりをメインとするプロジェクトもある。ロボット競技プロジェクトは、NHKの大学ロボコンでの優勝を目標に、ロボットの企画・設計・製作・テストを行うプロジェクト。渡辺康平さん(理科一類2年)は、全学体験ゼミの「ロボット競技を体験しよう」の受講生。1年のときからこのプロジェクトに参加し、創造的ものづくりプロジェクト履修生の先輩(3年生)と共に頑張っている。

「ロボット本体を設計・製作する〝メカ屋〟として、設計ソフトを使って設計し、ボール盤やバンドソーをはじめ、CNCフライス盤やレーザー加工機などの自動工作機械も使って製作しました。勝つためにはチームとしての戦いをする必要があることも学んだし、得た技術はこれからの勉強と、将来の職業へのいい土台になってくれそうです」

このほか、全学自由研究・体験ゼミには学部~年生に「工学部のものくり」研究を体験してもらおうという趣旨で、「無線ICタグを使って応用システムを作ろう」、「フォーミュラレーシングカーを作ろう」「、電気自動車を作ろう」など多様なゼミが用意され、年間数百人の受講がある。

全日本学生室内飛行ロボットコンテストへの出場を目指す飛行ロボットプロジェクトに参加した航空宇宙工学科の正村康太郎さん(工学部3年)は「模型でも設計の際には互いに影響しあうパラメーターや性能があり、何を優先するかという過程が難しい。製作でも、設計段階では数値化しにくい部分に対応する必要があった」と座学だけでは得られない知識を得たと感じている。

この飛行ロボットプロジェクトにTAとして参加した航空宇宙工学専攻の木村壽里さん(修士2年)は、「創造的ものづくりプロジェクト」/「創造性工学プロジェクト」の有効性を次のように総括してくれた。

「チーム活動を通して、学生たちはどうスケジュールを組むか、チームの中で自分の知識をどう役立たせるかといった現場において必須のスキルを身につけます。議論にもなりますが、その中で学生たちはコミュニケーション能力を学ぶんです。講義形式の授業だけではなかなか学べない部分を経験できるのがプロジェクト形式のゼミの利点です。これからの工学部生としては、講義で習った知識を実際の製作やチーム活動を通して、『使える知識』にしていくことが重要だと思います」