東京大学工学部

ENGINEERING POWER 東京大学工学部ガイド[エンジニアリングパワー] - 東京大学工学部

実績を重ねる国際化プロジェクト

国際的な発言力や発信力、そして世界を舞台としたフィールドで存在感を示すことが重要となってきている工学の世界。今求められているのは、異文化の中でもスムーズにコミュニケーションが取れる力を持つ人材の育成だ。
 工学部では、海外への留学を望む学生のサポートを行うとともに、海外から日本で学びたいという学生の受け入れも積極的に行うことで、教育環境の真の国際化の実現を推進している。

留学を通していちばん学んだこと。それは、とにかく挑戦すること

「自分の知らない世界が、こんなにも広がってるんだと」

大学1年生のとき、海外に触れる機会を得た。台湾で開かれたアジア各国の学生が集まる国際交流のイベントで、未知の世界への興味が呼び覚まされた。

だが大学生活4年間は、部活漬けの日々。体育会だ。なかなか時間も割けない。それでもオフの時期を見計らい、1年に1回程度、海外へ足を運んだ。

「多様な文化を知ることが、単純に、面白かったんです」

部活からの引退は、4年生の秋。ようやく、まとまった時間がとれる。そこで頭に浮かんだのが、セーブ気味だった海外への思いだった。

「部活を引退してからでしたね、真剣に留学を考えたのは。ただ、時期として遅く、工学系研究科の交換留学協定校は、ほとんどの募集が締め切られていました(笑)。でも、国際交流室の方に相談して、ウイーン工科大学を紹介していただきました。自分としては、国や場所について強いこだわりはなかった。ただ結果として、ウイーンを選んだのはよかったと思います」

オーストリアはヨーロッパのほぼ中央に位置し、交通の要所でもある。西からも東からも人が入ってくる。

「いろんな人がいるってことでも、自分があちこち行けるって意味でもよかった。たくさんの人に会え、多くの文化に触れられました」

寮生活は異文化共存。週末や夏休みを使って、多くの土地に足を延ばした。1年間の留学期間で訪れた国は、実にカ国。さらに、オーストリアに本部を置く国連機関でのインターンシップも経験した。

「手の届かないことだと思っていたんですが、せっかくオーストリアにいて、ビザや引っ越しの心配もなかったので、とりあえず応募しました」

インターンシップ中は、日本人職員の方に積極的にコンタクトを取って話を聞かせてもらうことを心がけた。

「国際協力に関心があり現場で働きたいという希望を折に触れて伝え続けていたところ、ケニアにプロジェクトを持つ職員の方から声をかけていただくことができました。ケニアでの3ヵ月間、決められた仕事はなく、自分から動いて仕事を開拓していきました」

苦労したのは英文の書類づくり。「英語は苦手じゃないんですが、論理的できちんとした文章を書くのは難しくて......」。国際機関は書類業務も多い。

「国際社会で働くためには、英語で意思疎通ができるだけでは不十分で、論理的に書く力が必須だと感じました」

留学を通していちばん学んだのは、とにかく挑戦する、動いてみることだ。

アメリカの大学システムよりも 東大のほうが研究しやすいです

アメリカでは名門ジョージア工科大学を卒業し、ボーイング社で働いていた。航空工学を学び、専門は制御分野。自動操縦がフィールドだった。

ただ、博士課程はとっていない。もう一度、研究に戻りたいとも考えていた。そのとき、ある国が頭に浮かぶ。

「ボーイングで働く前に1年間、日本にいた経験があります。英語を教えていました。大学を卒業しての旅行気分だったんだけど、前から興味もあって、すぐに日本を好きになった。帰ってからも、また行きたいと考えていました」

出会いは偶然だった。職場のボーイングを、のちに師事することになる工学部教授が訪れる。教授の研究と、自分の仕事には関連性があった。

「それで、いろいろと話をしました。最後には来ないか?と誘われた。日本では東大が大学のトップ、それは知っていました。すごくいい機会だと思ったから、(留学は)すぐ決めました」

5年働いたボーイングを辞め、来日の準備を始める。博士課程に行きたかった、それを日本でやろう。だが日本のビザの取得など、難しい作業も多い。

「いちばん難しかった。結構、時間もかかりました。書類は日本語で。でも工学部にはMEM事務室というのがあって、すごくサポートをしてもらった。メールでも細かいところまで教えてくれて、日本語のできない留学生を助けてくれました。(来日して)はじめは東京国際交流館というところに住んだんですが、それもMEMの紹介。留学生のための寮です。結構大きいところで、800人くらいが住んでいた。約2割は日本人なんですけど、みんなで楽しめて、そこで友達もできた。最初から独り暮らしだと、難しかったと思う。他にもMEMはスカラシップの受け方とか、英語による授業も実施してくれました。(留学生にとって)奨学金は大事です。あと、留学生のための団体旅行を企画してくれたりも」

東大に入って驚いたのは、かつて卒業した大学との学習環境の違いだ。

「びっくりしたのは、授業が週に1回だけだったこと。1時間分くらいですか。日本語があまりわからなくても、英語で勉強ができました。アメリカでは授業は週3回で、1時間ずつでした。宿題もアメリカと比べると少ない。私が卒業した大学は授業が大切、研究ではなくて。でも東大は逆に研究が一番。そのスタイルが自分には合う。勉強するのは自分。自分でスケジュールを決めることで、研究にも集中できました」

博士課程修了直後のインタビュー。

「これからは、東大で働きます。研究が、東大が、とても好きです」