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ENGINEERING POWER 東京大学工学部ガイド[エンジニアリングパワー] - 東京大学工学部

横山明彦 教授 | 工学系研究科 電気電子工学科

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Profile
工学系研究科 電気系工学専攻 工学博士
1979年東京大学工学部電気工学科卒業。’84年同大学工学部電気工学科助手。’85年同講師、’89年同助教授。’95年同大学大学院工学系研究科電気工学専攻に配置換。’00年より教授。スマートグリッド、広域系統適応型安定化システムなど、さまざまな研究テーマに取り組む。電気学会、日本応用数理学会、電力系統計算国際会議、国際大電力システム会議(CIGRE)などでも活躍している。

再生可能なエネルギーを取り込むために

学生とのコミュニケーションを大事にしている。

学生とのコミュニケーションを大事にしている。

地球的課題である環境問題の解決に加えて、東日本大震災後の日本では電気エネルギーの安定供給が喫緊の課題となっている。ふたつを同時に解決するためには、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを電力ネットワークに大規模に導入することが不可欠だが、自然の力を利用するこれらの方法には発電出力変動が大きいという弱点がある。そのままだと電力ネットワークが不安定になって、最悪の場合停電してしまうのだ。横山明彦教授は、この問題を解決し、再生可能エネルギーをいかに賢く、そして社会コストを最小限に、既存の電力ネットワークに取り込むかについてのさまざまな研究を行っている。

「電力ネットワークは、瞬時の発電量と消費量が常に等しくないと発電機が不安定になるんです。今の日本では、消費側が電気をつけたり消したりするのに合わせて既存の火力発電所が電力を上げたり下げたりのコントロールを自動的に行っているんですが、今度は発電側にも変動要素が入ってくる。しかも、再生可能エネルギーという新たな電源を取り入れてCO2を出す火力発電所を減らしていこうというわけですから、これまでの非常に優れた電力コントロール能力が下がることにもなります」

この相反を解決するために、太陽光および風力発電の出力変動を抑えるための工夫や、電力を溜める大規模な蓄電池の開発も始まっている。だが工夫や開発には時間もコストもかかる。そこで横山教授が目指しているのが、既存の優れた電力供給システムのネットワークに、需要家(ビルや家庭)側の蓄エネルギー設備(小型蓄電池や今後普及が予想される電気自動車やヒートポンプ給湯器など)を組み込んで、それらをICT(情報通信技術)でコントロールする日本型スマートグリッドというコンセプトだ。

「家庭にある電気自動車やヒートポンプ給湯器などを利用させてもらって、それを賢く制御して、発電量が少なくなった分を補う。今までは大きな発電所だけでコントロールしていたものに、小さなネットワークを含めて全部一緒に制御する。もちろん、クルマに乗りたいときに電池が空っぽじゃダメだし、お湯を使いたいときに貯湯槽が空っぽじゃ困る。だから家庭の利便性を損なわないようにそれらの機器をコントロールして、社会的なコストを最小限に太陽光/風力発電を従来の優れた電力ネットワークの中に取り込んでいく。それが我々が考えている日本型スマートグリッドです」

国民が判断するためのプランを提案するのが役目

研究室の壁一面に並ぶ書籍や資料の数々。「図書館に行かなくても大丈夫」だそう。

研究室の壁一面に並ぶ書籍や資料の数々。「図書館に行かなくても大丈夫」だそう。

その日本型スマートグリッドを実現するためには、ICTによる双方向通信が不可欠となる。

「電気自動車にどれだけ電気が溜まっているかとか、ヒートポンプにお湯がどれだけ残っているか、あるいは太陽光がどれだけ出ているかなどという情報を集めてきて、それを利用しないとうまくいかないんです。大量のデータを高速通信網を使ってコントロールし、電力ネットワーク全体を安定させないといけない」

適正な制御システムを開発するため、現在、柏キャンパスでは横山教授が指揮をとり、国の「次世代送配電最適制御技術実証事業」の一環としての実証試験が行われている。この実験では太陽光発電を行っているほか、電気自動車、ヒートポンプ給湯器が家庭での使われ方を想定して充放電や蓄熱を繰り返すようにプログラミングされており、それらをICTでコントロールする試みが繰り返されている。

「柏の実証試験は今(’13)年で4年目を迎えました。これが終われば、リアルなフィールドでの試験に移ることになります。実際の家庭では、プログラミングされた動きとは違って、突然シャワーを浴びたり、電気自動車で買い物にいく人も出てくるはずですから、やってみないと制御システムがうまく働くかどうかわからない。これに加えて、ひとつひとつのシステムを全体として効果的に制御するための中央コントロルセンターのシステムも必要になる。それも今、柏で開発をしています」

さらには、日本型スマートグリッドにより火力発電所から発生するCO2がどれだけ減るか、そのためのコストはどれくらいかかるか、電気自動車やヒートポンプ給湯器を使わせてもらう家庭にはどれだけの消耗費用を払うべきなのか、などの経済面に踏み込んだ研究も行われているという。

「これまでの電力ネットワークに、太陽光、風力を入れようとすると、その変動に対応できる日本型スマートグリッドのような対策が必要なわけですから、コストは高くなる。環境問題と電力の安定供給を両立させようと思ったら、電気料金は上がる。それをどこまで国民が耐えられるかで、このスマートグリッドの規模が決まります。僕らはシステム技術者としてコストを最小化する社会システムを考えますが、最終的に判断するのは国民です。そのための技術を提供しておく、というのが我々の役目だと思っています」

柏キャンパス研究棟で行われている実証実験

電気自動車を常設、使用状況を再現

スマートグリッドでは蓄電池としての役割が期待される電気自動車。柏キャンパスでは車そのものは動かないが、実際の使用状況を予測したプログラミングで充放電を繰り返し、それを全体のネットワークに合わせて制御している。

太陽光発電の発電力を制御

キャンパス屋上に設置されたソーラーパネルによる太陽光発電では、ネットワーク全体の要求に応じて発生電力を自動的に制御したり、発電量が多すぎるときは電気自動車の充電に回したりするなどのシステムが試験中だ。

プログラミングされたヒートポンプ給湯器

エアコンのコンプレッサーでお湯を沸かすヒートポンプ給湯器は、沸かす速度を増減することで電気エネルギーを熱として調整することが可能。こちらも電気自動車同様、家庭の使用を再現するプログラムで動く。

制御システムの運用実験

電気自動車や太陽光発電、ヒートポンプ給湯器の制御システムが置かれた実験室。ソーラーパネルの発電量や電気自動車、ヒートポンプの稼働状況がディスプレイで把握できるようになっており、機器間をICTで管理している。

研究室学生インタビュー

社会の根幹である電力インフラに自分が貢献できます

横山研究室 小川耕平さん Kohei Ogawa 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 修士課程2年、横山研究室 岡 佑太朗さん Yutaro Oka 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 修士課程2年

横山研究室では日本型スマートグリッドや、
エネルギーの最適化に関するさまざまな研究が行われている。

おふたりの現在の研究テーマを教えてください

蓄電池の費用便益評価というのをやっています。日本型スマートグリッドでは、蓄電池はコストが高いのであまり使わず電気自動車などで補助していこうという考えですが、蓄電池を導入するメリットを考慮すれば、便益が費用を上回るかもしれない。その検証がこれまではほとんど行われていないので実際に入れたらどうなるかのコスト計算などを行っています。

小川近年では、地域冷暖房システムが発電したり、電気を消費したりとか、電気を扱うようになってきました。ですので、このシステムのプラントをうまく制御して、電力ネットワーク全体に貢献できないかという研究をやっています。やはりコスト計算も含めて、例えば蓄電池よりこれを使ったほうが安くなるんじゃないかというような検討をしています。

この研究のどんなところが魅力ですか?

小川実際に技術で制御が可能かということだけじゃなく、コストまで考えるとどうなのか。電力は社会に直接関わる問題なので、工学的な技術だけでなく、経済的、社会的な面も考えなくてはいけません。そんな思考方法が身についていくところが面白いです。

自分も同じですね。経済的な視点と工学的な視点の両方を使うのが自分の研究の特徴で、両方の橋渡しができるのが魅力ですね。

研究で使うソフトを自らプログラミングするそうですね?

それが横山研究室の特徴です。商用ソフトを使っても結果は出てくるんですが、なぜそうなったかという理由 がわからないことも多い。社会人ならともかく、今は大学にいるので、自分で、なぜそうなったかというのを理解できないと研究にならないんです。

小川最初にプログラミングを教えてもらって、課題をこなすうちに身につくので、まったく知識がない人でも問題ないです。ソフトもそうですが、研究スケジュールも自分で組み立てます。とにかく自分で道を切り拓く。自主性がウチの研究室のテーマです。

会議室になったり
スポーツ観戦会場になったり

研究室には大型のプロジェクターがあって、ここでプレゼンテーションをしたり、ディスカッションしたりします。たまには、コレでサッカー中継を見て、みんなで盛り上がることも。

先生のお宅で開く
パーティは楽しいですよ

毎年夏と冬には横山先生のご自宅にお伺いして「先生を囲む会」を行います。先生の奥様による料理をたくさん頂いたりして、研究室のアットホームの象徴になっています。

図書館いらず!
必要な資料はそろってます

実験系ではないので研究室内の設備にはパソコン以外のお金はほとんど掛かっていません。そのかわり本が充実しています。図書館に行く必要がないくらいの資料がそろいます。

あくまで頭と手先を
鍛える体操です!

この丸テーブルではすぐにマージャンができるようになっています。結果を記録に残したり、確率や関数を使ったりして、真剣にやっています。「最適化」の研究にも役立つはず?

キャンパス内にある
ジムに通っています

研究ばかりで体がなまらないよう、御殿下のスポーツジムにはよく通っています。研究室内にも年間パスを持っている人がたくさんいます。写真はそのジムの入館証です。

3分の1が留学生!
学科屈指の留学生比率です

撮影時には1名しかいませんでしたが、実は横山研究室の学生のうち、3分の1くらいは海外からの留学生です。学科の中でも留学生の多い研究室として知られています。

精密工学科

世界初の電気系専門学科として1873年に誕生。歴史と伝統を継承し、常に時代を切り開く新しい概念や先端技術を生み出してきた。例えば、一見古典的と思われる電気工学・電子工学の分野でも、環境、エネルギー、ナノテクノロジーなどさまざまなキーワードを核として発展し、電気電子工学科は常にそれらの改革の中心にいる。電気磁気学・量子論を中心とした物理を基礎としながら、電子情報工学科と連携をすることで物理学側面と情報学的側面を融合させた教育を行っている。