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石田哲也 教授 | 社会基盤学科

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Profile
工学系研究科 社会基盤学専攻 博士(工学)
社会基盤学専攻教授。専門はコンクリート工学、地圏環境工学、多孔体熱力学。2003年より本学助(准)教授、ʼ13年より教授。セメント系材料と構造のライフスパンシミュレーションなどをテーマに、幅広く研究。土木学会論文賞、土木学会吉田賞、日本コンクリート工学会論文賞など受賞多数。著書に『マンガでわかるコンクリート』等。

時間と空間を越えコンクリートの基礎&先端開発

実験で使用するコンクリートは、自分たちでつくる。

実験で使用するコンクリートは、自分たちでつくる。

1人あたり1年間で約4トン。

これは、日本人のコンクリートの消費量だ。4トンというと、町中を走る小型コンクリートミキサートラック1台分にもおよぶ。

「相当な量です。この莫大な量が使われるコンクリートが少しずつでもよくなれば、ものすごく世の中が変わると思いませんか?」

コンクリートを愛してやまない石田哲也教授は、コンクリートで世界を変えようとしている研究者だ。

「コンクリートは、先端技術が詰まった大規模建設現場のプロフェッショナルだけでなく、DIY好きな近所のおじさんに至るまで、誰もが扱えます。しかも、1ℓわずか10円程度。安くて耐久性があります。練っても数時間は固まらないから扱いやすいし、材料は、セメント、砂、砂利、水の4つだけ。世界中どこでも手に入る自然素材でつくれる。こんなに使い勝手のいい素材は、コンクリート以外にありません」

ただし、そのシンプルな材料と誰でも扱える手軽さゆえに、その品質には大きな差が出てしまうのだという。 「コンクリートと人間は似ています。人が成長期にしっかり教育を受けることで壮年期に活躍できるように、コンクリートも長い期間にわたって頑丈でいるためには、最初にきちんと手塩にかけて育てるかどうかが重要です」

コンクリートはそもそも、数百年はゆうにもつ堅牢なポテンシャルをもっているという。ローマでは2000年以上にわたって健全なローマンコンクリートが存在するほどだ。では劣化してしまう原因は何なのだろう?

「コンクリートには小さな孔が無数にあり、その一部は常に水を含んでいます。ナノサイズの空間で起こる水分子やイオンの移動、またさまざまな化学反応が、コンクリートの劣化に大きく影響します。また実際には鉄筋とコンクリートの組み合わせで使用されるのが一般的ですが、内部の鉄筋が錆びることも大きな問題です」

コンクリートの〝手塩のかけ方〟とは?

「ふだんフレンドリーな石田先生も研究となるとシビアです」と蓑毛くん。

「ふだんフレンドリーな石田先生も研究となるとシビアです」と蓑毛くん。

「コンクリートが固まっていく反応を水和反応というのですが、コンクリートづくりのカギは水です。きちんと水を与えること、乾燥させないことが大切です。それと温度管理。水和反応では、セメント1gで水1gを20度から100度にしてしまうほどの反応熱が出ます。大きな構造物をつくるときなどは、内側と外側で温度差が生じてしまいひび割れを起こしてしまうことがあります。はじめに材料を冷やしておくなどの工夫が必要です。また、現地で材料を調達して、現地でつくるのがコンクリートの基本。手塩のかけ方は、じつは場所によって変えなければいけません。気温の高い熱帯地域ではあっという間に内部が高温になってしまいますし、寒冷地では反応がなかなか進みません。さまざまな環境で育つわけですが、方法が適切でなければ劣化も早い。ただし世界中でつくられるコンクリートの品質向上のために、個別の事例だけに着目していては追いつきません。そこで、もっと根源的なレベルから考えられないかと、ミクロなメカニズムに立ち戻った研究を進めています。計算上で再現できるようモデル化をしているのです。今後は、どういう環境でどういうつくり方をすると、将来どんなことが起こるのか。人間でいえば、どんな食生活や環境で育つと、将来どんな病気を発症しやすいのか。そんな母子手帳とカルテを結びつけるような研究も、最先端の情報通信技術とシミュレーション技術を駆使しながら、やっていきたいですね」

コンクリートの性能や品質を向上させる研究と同時に、石田研究室で取り組むのが、先端的な技術開発だ。

「月面基地をつくるための〝ルナコンクリート〟について研究したことがあります。月には水以外の材料があるので、水素を運んで水を合成すれば、コンクリートをつくることが可能になります。月面の真空環境や激しい温度差がある環境で、コンクリート構造物がどのように変形し、また損傷を受けるのか研究を行いました。あとは、高耐久性の極みとして数万年もつコンクリートの研究も。これは放射性廃棄物の処分を念頭においています。長い半減期をもつ放射性核種を、数万年というオーダーで密閉可能か、またコンクリートが耐えられるのか、計算機でシミュレーションを行って検討しました。そのほか、どうやったら簡単に壊せるコンクリートがつくれるか?という面白い研究なども。人間の骨が破骨細胞という細胞により新陳代謝するように、コンクリートをばりばり食べてくれる微生物をみつけて、自壊するコンクリートをつくれないかと(笑)。これは、まだ道半ばです。最近は、丈夫かつ〝美しい〟コンクリートを開発できないか研究しています。武骨で荒削りな印象のコンクリートですが、大理石や鏡のようにピカピカの打ちっぱなしのコンクリートができないか、いろいろと試しています。驚くほどキレイなコンクリートをつくってみたいですね」

石田教授の研究室には、時間も空間も越えるスケールで、社会とかかわるコンクリートの世界が広がっている。

グローバルに! 幅広く! コンクリートを研究

センサーを埋め込んでデータを収集!

コンクリートが徐々に固まり、構造物としての機能を発揮し始めるプロセスを知るために、実際の建造物にセンサーを埋め込み、温度やひずみ、水分の状態を連続的に測定。実測から、ひび割れを防ぐ耐久的な構造物を探る。

多くの学生が参加するプロジェクト見学会

ベトナム・ハノイの紅河をまたぐニャッタン橋。日本の技術を結集した巨大な橋が現在建設中(三井住友建設・IHIインフラシステム)。国際的なインフラ建設プロジェクトを視察する企画では、3〜4年生らが多数参加している。

経年劣化を知るための解析シミュレーション

コンクリート構造物がどのように変化し、劣化が進むのかを解析。外力によって発生する変形・ひび割れや、環境作用によって変化する水分状態や腐食の進行など、同時進行するさまざまな現象を時空間軸上でシミュレーションする。

守備範囲の広さが本棚に表れています!

蔵書のラインナップの幅広さは、石田教授ならでは。コンクリート系はもちろん、マネジメント論などのビジネス書、東西を問わぬ哲学書から人気小説まで。自著『マンガでわかるコンクリト』の中国語版、韓国語版も並ぶ。

研究室学生インタビュー

国際プロジェクトコースは海外での研究やプレゼンも! 多様な価値観が面白い

石田研究室 蓑毛宏明さん Hiroaki Minoo 東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤学専攻 修士課程2年

1年生の冬学期に「社会基盤学C(国際プロジェクトコース)」を知り、「ここにいきたい!」と猛勉強をした蓑毛さん。その学生生活とは?

願いが叶った国際プロジェクトコース。いかがですか?

すごくいいです!僕はなんと3回もフランスに行く機会に恵まれて。自分でも、まさかここまでなるとは思っていませんでした(笑)。

最初は3年生の夏に、社会基盤学科の提供する留学制度を利用してリヨンへ。地盤研究の研究室に在籍したのですが、全然貢献できなくて。でも、まずは文化の違いや自分をみつめる機会と思ってのびのび過ごせばいい、と先生に言ってもらい、気がラクになりました。2回目は4年生のときに、パリ郊にあるコンサルティング会社へ、二酸化炭素を地下に埋めるためのコンクリート技術のプレゼンへ。3回目は、プレゼン相手だった会社の社長さんに直談判して、3カ月ほどインターンとして滞在させてもらいました。

行動派ですね! フランスでの研究生活で得られたものは?

最初の留学で、とにかく英語をミスしながら話すことに抵抗がなくなった経験が大きかったですね。

インターンで長期滞在していろんな国の人達と一緒に研究をする中では、多様な価値観をもつ人達と対等に話し合いながら研究できたのがよかったです。また、社員同士で密に連携して効率よく仕事を進める欧米コンサルの風土も、とても参考になりました。

現在はどんな研究をしていますか?卒業後は何を?

鉄筋コンクリートの塩害を研究しています。波しぶきで海水が舞い上がり、海風にのって海岸のコンクリート構造物に海水が付着します。海水中の塩分がどのようにコンクリートの中を移動し、浸透していき、鉄筋を腐食させるのか、コンピュータでシミュレーションするんです。これまで、波しぶきが風にのるモデルや、腐食のモデルはあったのですが、一連の流れでのシミュレーションは初めて。自然現象が相手なのでモデル化は大変ですが、有意義な研究にできるよう取り組んでいます。卒業後は、広告代理店へ就職します。この研究室で得た知識・経験・人脈を生かして頑張ります!

国際色豊かな研究室で英語力もアップ

ポーランド、オーストラリア、エジプト、スリランカ、タイ、中国......。石田研究室には外国人留学生・研究員がいっぱい。国際色豊かな顔ぶれの中で送る研究生活は刺激的です。

パリでプレゼン!
インターンを直談判

4年生で経験したパリでのプレゼン。このあと、プレゼン相手の社長と昼食に行き、その人柄に惚れ込んでしまいその場で「インターンさせてください!」と熱烈オファー。

海外プロジェクトに研究でしっかり貢献

パリでのインターン時代。地下1000メートル程度の不透水層に二酸化炭素を埋め込むCCSプロジェクトに関する研究を担当。フランス語に苦心しながらも、結果を残しました。

卒業旅行は
ヨーロッパへ

社会基盤学科には、留学する学生が数多くいます。パリでのインターン時代、ヨーロッパに留学中のメンバ ーでドイツのミュンヘンに集合し、社基ヨーロッパ会を開きました!

メーカーも驚いた
新発明!? 蓑毛システム

研究に使う「超臨界炭酸ガス試験装置」の圧力排気バルブが急冷されて詰まることに悩まされ、使い捨てカ イロを巻くことを発案! メーカーも「これはいい!」と絶賛でした。

愛読書は
石田先生の書いた本

愛読書は『Multi-Scale modeling of structual concrete』。石田先生らがまとめた、東大コンクリート研のこれまでの研究がつまっている名著。全編英語ですが、コンクリート研究をするなら必読!

社会基盤学科

道路や公園、橋、駅や鉄道、物流や情報通信施設、電気や水道など私たちの生活基盤づくり、自然環境づくりを支える、さまざまな社会基盤技術。その基礎技術を学び、デザイン・政策決定・マネジメントに関する研究や開発を行うのが、社会基盤学科だ。学生たちは地方都市の再生、自然環境の保全、環境・エネルギー問題の解決など、国内外の多くの課題と向き合い、日々研究に励んでいる。今改めて注目される防災対策なども重要な研究テーマである。