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大澤 幸生 教授が「業績賞」を受賞されました


2022年6月22日、システム創成学専攻 大澤 幸生 教授が人工知能学会において「業績賞」を受賞されました。

JSAI業績賞_大澤幸生
人工知能学会「業績賞」
社団法人人工知能学会では、人工知能に関する学術またはその応用に関し、著しい業績を成し遂げた者を表彰し、もって学術またはその応用のより一層の発展を奨励することを目的として、人工知能に関する学術またはその応用に関し著しい実績がある者のうちから選定して学会員である個人に業績賞を贈呈します。選考方法は正会員、役員等による記名推薦に基づき、選定委員会(委員長1名、幹事2名、委員からなり今回の総数は21名)により選定されます。審査基準は人工知能に関する学術またはその応用に関しての業績とその寄与と波及効果を考慮し、特に独創性あるいは、有用性を重視するものです。
表彰は6月22日(社員総会終了後)に行われ、受賞者には賞状と記念メダルが贈呈されました。東京大学では辻井潤一教授以来二人目の受賞で、工学系研究科では初受賞となります。

受賞された研究・活動について
「データ保有者とデータ解析者の相互作用に着目した先駆的研究」
大澤幸生氏はデータ解析がデータ保有者とデータ解析者との相互作用に着目し、そのプロセスの本質を追究してきました。まず、1998年にKeyGraph のアルゴリズムを発表、地震、ビジネス、医療等のデータに活用し、本手法によって抽出されるグラフ構造から単に共起性のネットワークのみならず、周辺的な領域が、専門家のイノベーションを誘発することを報告、その発見プロセスをチャンス発見プロセスと名づけ、さらにこれを発展させデータ科学における様々な概念を提案しました。その後、データ解析をデータサイエンティストとドメインの専門家とが知と価値の錬成の場であることを発見して知識とデータ相互作用に着目し、専門家のもつ潜在構造の炙り出しに基づき、データの設計と使用可能なデータから対象の潜在構造を可視化するプロセスであるInnovators' Marketplace on Data Jacket(IMDJ)を2013年に提案し、その上での専門家のイノベーション創成を促進する様々な技術を開発してきました。さらに、IMDJを単一分野のみならず異分野間のデータが流通する多層空間に拡張し、異種データネットワークからなる創造的データ市場においてデータ間の相互作用を説明する研究開発を進めています。
IMDJの手法はビジネス領域に対する応用のみならず、COVID-19の流行予測のプロジェクトにも適用され、人の分布、特に「知らない人との接触」が本質的な情報であることを意味するStay with Your Communityという原理を発見し、2020年に発表しました。この成果で専門家に対して他手法では得られなかった有益な提言を行うことができました。

以上、大澤幸生氏はデータ駆動型イノベーションの本質を追究し、さまざまなアルゴリズムを開発したのみならず、自らさまざまな領域に適用し、大きな成果を得てきた。データ解析の本質に対する四半世紀にわたる一貫した研究成果は人工知能学会の業績賞に値するとの理由により受賞しました。

今後の抱負・感想
誠に光栄です。多くのメディアがごく最近の人工知能のトレンドを見て日本のレベルを低く評価しがちですが、人工知能は機械学習を同義ではなくはるかに広大な分野であり、日本の人工知能学はその広大な分野の夢と本質を追求する発展性と魅力において、世界のトップだと私は思っています。そんな人工知能分野における偉大な先輩、同世代、若手の皆様をさしおいて私を評価して頂けたことは誠に光栄の至りです。
しかしながら、賞を私が頂くだけでは、本来工学が追求する人間社会の利益としてはあまりにも限界がありますので、その内容と発展の方向を今後もお伝えしてゆきたいと思います。データ連成イノベーションリテラシー(DFIL)社会連携講座による記念講演会には研究科長はじめ様々な方にご祝辞など頂けることとなり、深く感謝しております。今後とも、知識システムを育てる工学と3D連携(産官民学×国際×学際)の発展に微力をささげたいと願っております。