プレスリリース

生体材料を人工分子に精密移植-サイボーグ超分子がときあかす病原物質の起源- : 応用化学専攻 藤田誠教授

 

東京大学 大学院工学系研究科 応用化学専攻の藤田誠教授と自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター/分子科学研究所の加藤晃一教授、東北大学 原子分子材料科学高等研究機構の佐藤宗太准教授らの研究グループは、自己組織化の手法をつかって、精巧に分子デザインされた糖鎖クラスターをつくりだすことに成功しました。有機分子と遷移金属イオンとの自己組織化をつかうと、一義構造をもつ世界最大級の球状分子を、原料を混ぜるだけで効率的に構築できます。
(参照:過去の東大からのプレスリリース

本研究グループは、生物由来の糖鎖を人工合成した自己組織化超分子とハイブリッド化し、サイボーグ超分子をうみだすことに成功しました。凝集性タンパク質は疎水性の部位があると捕捉されてしまうので、糖鎖クラスター部分との結びつきを観測できなくなってしまいます。そこで、本研究グループは、疎水性の細胞膜に相当する部位がない球状分子に、GM1ガングリオシドに含まれる疎水性部分を切除した上で糖鎖だけを連結する工夫をしました。このような分子設計にもとづいて、糖鎖の数や位置・表面の曲率といったクラスターとしての構造が厳密に制御された、GM1糖鎖クラスターをつくりだしました。この糖鎖クラスターをアミロイドβタンパク質と混合し、核磁気共鳴(NMR)による解析を行ったところ、タンパク質のN末端を選択的に認識する様相がわかりました。また、パーキンソン病の発症に深く関わっているα-シヌクレインタンパク質の認識機構が明らかになりました。生体内糖鎖クラスターを、その生体機能を保持したまま構造が明確な人工分子に移植することで、高分解能な解析を実現できる分子の開発に至り、未知の生命現象の機構に迫ることができました。

 

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