プレスリリース

エネルギー損失のない高容量電池実現へ

 

発表者
山田
 淳夫 (東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 教授)
大久保
將史 (東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 准教授)
Xiang-Mei Shi
(東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 博士研究員)
土本
 晃久 東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 博士課程 1
        日本学術振興会 特別研究員(
DC1

 

概要:

持続可能なカーボンニュートラル社会を構築することを目指し、自然エネルギー(太陽光、風力)から生まれる不安定な電気エネルギーを蓄え、必要な時に必要なだけ電気エネルギーを安定に供給できる電池の開発が望まれています。しかし、現在使用されている電池が蓄えられる電気エネルギーは限られており、電池の中で電気エネルギーを蓄える機能を果たす電極材料である遷移金属酸化物を高容量化することが必要です。特に、遷移金属酸化物に含まれる酸素の電子を電力貯蔵に利用する試みが長年行われてきましたが、蓄えた電気エネルギーを熱エネルギーとして大幅に失うため電力貯蔵の効率が低く、その実用化は困難でした。
東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授、大久保將史准教授、Xiangmei Shi博士研究員、土本晃久大学院生らの研究グループは、酸素の電子を使っても熱としてエネルギーを失うことなく電気エネルギーを蓄えることができる電極材料を発見しました。現象を詳しく解析した結果、酸素の電子を電力貯蔵として利用した場合に熱として失われる原因が、酸素原子同士が結合を作ることであることを明らかにし、今回開発した電極材料は酸素原子が結合を作らず、蓄えた電力エネルギーをそのまま利用できることが分かりました。したがって、酸素原子が結合を作らない電極材料を電極材料に使用することで、エネルギー損失を起こさずに電池を高容量化することが可能です。
本研究成果は、2021年1月27日付の英国学術誌Nature Communications電子版に掲載されました。

 


プレスリリース本文:PDFファイル

Nature Communications:https://www.nature.com/articles/s41467-020-20643-w

日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP603956_X20C21A1000000/