プレスリリース

柔らかいスピントロニクスセンサで生体モーションを計測することに成功 ~ウェアラブルスピントロニクスデバイスに道~ : 物理工学専攻 千葉大地准教授(研究当時)ら

 

ハードディスクや不揮発性磁気メモリなどの磁気記録デバイスは、スピントロニクス技術の発展とともに大きく記録容量を伸ばし、なくてはならないものとなっています。しかし、そこで使われているスピントロニクス素子は、硬い基板に支えられ、曲げたり伸ばしたりする状況下での使用は想定されていませんでした。

東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の松本啓岐氏、同 太田進也氏、同 千葉大地 准教授(現 大阪大学産業科学研究所 教授)、株式会社村田製作所の安藤陽氏からなる研究チームは、柔らかい有機シート基板上にひずみの方向をセンシング可能なスピントロニクス素子を形成し、手の甲に生じるひずみを検出することで、曲げた指の方向を同定することに成功しました。ひずみに対して磁化方向を敏感に変化させる強磁性層と、反強磁性層と積層することによってひずみを与えても磁化方向が常に変わらない強磁性層の二種類のナノ薄膜を素子構造に用いることにより、安定した動作が可能となることを示しました。本成果は、スピントロニクス素子がウェアラブルなセンサとしてもその性能を発揮できることを示すものであり、より精密な生体モーションの推定に向けた取り組みの突破口を拓くものです。

本成果は、2019年4月5日に、「Applied Physics Letter」のオンライン版に掲載されました。

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Applied Physics Letters : https://aip.scitation.org/doi/full/10.1063/1.5091033